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⑮
「ん…どうしたの、ルー?」
「いや、オリバー団長と随分親しくなったのだな、と…」
さっきから様子のおかしいルーの顔を、仰ぎ見れば。なんだかつまらなそうな物言いで答えられて。
気になって食い入るよう、じ~っと見つめたら。
最初こそは誤魔化して、そわそわしていたけれど…
しばらくすると、観念したよう重たい口を開いた。
「…団長と、何を話していたんだ?」
「え?何って…」
普通に今日のお礼とか…そんな程度だったと思うけど?
答えてもルーは、腑に落ちないといった顔で続ける。
「手を、握っていたように見えたが…?」
言われてハッとするオレ。
そういえば、そんなことしてたっけか…
ルーが来る直前、ちょっと妙な雰囲気になってたしなぁ…。もしかして、それを気にしてるんだろうか?
でも、それって…
「成り行きでさっ…変な意味は、ないんだけど…」
真剣な目でルーに見つめ返され、つい焦ってしまうから。それでもなんとか弁明しようとするのだけど…。
今日に限ってルーは、疑り深くなってるようで…。
まるで見透かそうとでもするかのように、目を細められる。
「…オリバー団長は気さくな方だし、騎士としても誰もが尊敬するような存在だ。きっとセツとも気が合うだろうとは、思っていたが…」
それでも、とルーは伏し目がちに告げる。
「例え誰であっても、このような気持ちになってしまうのだな…」
「ルー…」
はっきりとは言わないルー。
だけどその憂う瞳が、全てを物語っており。
こんな判り易い反応をされたらさ…オレの打たれ弱い心臓なんて、簡単に押し潰されてしまいそうだよ…。
(ルー…)
けどオレは耐え偲んで。
紡ぎそうになる言葉を、喉の奥ギリギリで噛み殺す。
「すまない、困らせてしまったな…」
時期に日も暮れるし、皆も待っているからと。
ルーはオレの心情を汲み取り、背を向ける。けど…
卑怯者のオレは、やっぱりその腕に手を伸ばしてしまうから。今度はルーが困ったように苦笑い、眉根を下げてしまった。
「ごめん…オレ、誰とでもすぐ打ち解ける方でさ。だから、その…オレはよく鈍感だって言われるしっ、気も利く方じゃないけど…」
それでも気付いちゃったし、今のルーは誰が見てもあからさまだったから。
「オリバーさんは良い人だし、神子とか関係なしに仲良くしたいなって思ったよ…」
余計なことを言ったら、またルーを不安な気持ちにさせちゃうだろうけど。オレは口下手ながらも、ゆっくりと思ったことを…偽りなく吐き出す。
「オレが中途半端で、何も言わないからっ…ルーを困らせてばっかなのは解ってる。けど…オレはお前のことを、」
“特別だと思ってるよ”
最後の最後で、本音を飲み込み。
許されるギリギリの言葉で、伝える。
狡いのは百も承知…
だけどこれが今のオレに出来得る最善、だったんだ。
「それじゃダメ、かな…?」
「セツ…」
ぎゅっとルーの袖を掴み、深緑の瞳を見つめる。
何を言っても、結局はルーを惑わせてしまうことに変わりはないけれど。オレの想いは、どうにか伝わったみたいで…
「いや、私には充分過ぎる言葉だよ…」
応えてルーはオレの手を取り。
何かを誓うかのような柔らかなキスを、甲にそっと落としてくれた。
その後すぐに、ヴィンが咳払いしながら戻って来たので。これ以上…変な空気にはならなかったけども。
言葉は無くても、何処かで通じ合えてることに。
オレはすごく救われているような、気がしたんだ…。
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