185 / 423
ep. 17 護られる者の献身①
「セツ、また良く眠れなかったみたいだな…」
「ん…おはよ、ルー…」
こないだまで避けてたこともあったけれど。
今は以前のように、こうしてルーに起こされる朝に戻っていた。
コイツは解ってんのかな…
この1日の始まりを、その愛おしい声で目覚められる喜びを。
早起きは苦手だ。
けど、いい歳して起きられないほどじゃない。
本音はルーが、この他愛ないやりとりが、あまりに心地良いから…
オレはわざと朝寝坊するんだ。
「今日は終日、雨だそうだ。」
言われて窓から外を見れば、霧雨で辺りは靄がかっていて。雲の隙間もほぼなく、どんよりとしている。
「仕度が出来たら、下へ降りよう。」
告げてルーは、いつもみたく廊下で待つため部屋を出ようとするのだけど…
何故だかその背中に、妙な感覚を覚えたオレは。
ベッドから弾かれるよう飛び起きて…
「っ…せ、ツ…?」
つい、ルーの背中に縋りついてしまった。
「着替えねば…だろう…?」
解ってる、こんなことしてもルーを困らせてるだけだし。ダメだって…
「ごめ…ちょっと夢見が悪くて。すぐ、着替えるから…」
「そう、か…」
本能的にとはいえ、なんでこんなことしちゃったのか…考えても、気持ちの整理は追い付かぬまま。
罪悪感に、自ら触れておいて離れていく。
ルーは一瞬、躊躇していたけど。
敢えて振り返らず黙ったままで。足早に、部屋を出て行ってしまった。
(はぁ…ホントどうしょうもないな、オレ…)
覚悟を決めておきながら。
思わせ振りな態度ばかり取ってしまう自分に、うんざりする。
抑え込めばその分だけ、ルーへの想いがより膨らんでしまうのは────必然でしかないわけで。
(こんなんじゃ…)
ダメダメ、しっかりしなきゃ。
ルーには辛い思いばかりさせてるし。オレだって、守りたいものがあるんだから…。
「んっ…!」
バチンと両手で頬を叩き、己を鼓舞する。
いざという時に足元を掬われぬよう、今は迷ってちゃいけないんだ。
決心が鈍らないように、一度だけ大きく深呼吸をして。オレは手早く身仕度を済ませると、急いでルーの元へと向かった。
ともだちにシェアしよう!