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ep. 17 護られる者の献身①

「セツ、また良く眠れなかったみたいだな…」 「ん…おはよ、ルー…」 こないだまで避けてたこともあったけれど。 今は以前のように、こうしてルーに起こされる朝に戻っていた。 コイツは解ってんのかな… この1日の始まりを、その愛おしい声で目覚められる喜びを。 早起きは苦手だ。 けど、いい歳して起きられないほどじゃない。 本音はルーが、この他愛ないやりとりが、あまりに心地良いから… オレはわざと朝寝坊するんだ。 「今日は終日、雨だそうだ。」 言われて窓から外を見れば、霧雨で辺りは靄がかっていて。雲の隙間もほぼなく、どんよりとしている。 「仕度が出来たら、下へ降りよう。」 告げてルーは、いつもみたく廊下で待つため部屋を出ようとするのだけど… 何故だかその背中に、妙な感覚を覚えたオレは。 ベッドから弾かれるよう飛び起きて… 「っ…せ、ツ…?」 つい、ルーの背中に縋りついてしまった。 「着替えねば…だろう…?」 解ってる、こんなことしてもルーを困らせてるだけだし。ダメだって… 「ごめ…ちょっと夢見が悪くて。すぐ、着替えるから…」 「そう、か…」 本能的にとはいえ、なんでこんなことしちゃったのか…考えても、気持ちの整理は追い付かぬまま。 罪悪感に、自ら触れておいて離れていく。 ルーは一瞬、躊躇していたけど。 敢えて振り返らず黙ったままで。足早に、部屋を出て行ってしまった。 (はぁ…ホントどうしょうもないな、オレ…) 覚悟を決めておきながら。 思わせ振りな態度ばかり取ってしまう自分に、うんざりする。 抑え込めばその分だけ、ルーへの想いがより膨らんでしまうのは────必然でしかないわけで。 (こんなんじゃ…) ダメダメ、しっかりしなきゃ。 ルーには辛い思いばかりさせてるし。オレだって、守りたいものがあるんだから…。 「んっ…!」 バチンと両手で頬を叩き、己を鼓舞する。 いざという時に足元を掬われぬよう、今は迷ってちゃいけないんだ。 決心が鈍らないように、一度だけ大きく深呼吸をして。オレは手早く身仕度を済ませると、急いでルーの元へと向かった。

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