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②
「また魔物が暴れたってよ。」
最近の食事の話題は、専らこればかりで。
ジーナはうんざりしたよう溜め息を吐く。
「神淵の森付近だそうですね。駐屯地の警備隊が処理したそうですが…」
「え…駐屯地って、まさか孤児院の近くの?」
オレが思わず声を上げると、ヴィンが静かにハイと答えるから。オレはティコ達のことを思い出し、表情を曇らせる。
「安心して、セツ。孤児院に被害は無いようだから。」
ね?とアシュが目配せする。
宥めるよう優しく諭されて、オレの不安は少しだけ和らいだ。
「聖域がある分には、警備も厳重だからな。何事も無ければ良いが…」
ルーもきっと心配なんだろう、子ども達とは一番深く関わってるからね…。
本当なら、今すぐにでも様子を見に行きたいだろうけれど。守護騎士としての責任もあるから。色々と歯痒い思いをさせてるのかもしれないな…。
「ティコ達ならきっと大丈夫だよ、セツ!」
元気出してと、可愛いロロによしよしと励まされ。
オレもうんと返事し、空元気で応える。
本当はまだ気が気じゃなかったけども。
今はただ、ティコ達の身の安全を祈る外なかった。
「あ~…今日は一日、退屈しそうだな~。」
朝食を終え、談話室で寛いでいると…ジーナが背伸びしながらぼやく。
外では相変わらず、雨が降り続けており。
遠くの景色も白くぼんやりとしか見渡せなければ、止む気配すら無い。
「ジーナは身体動かしてないと落ち着かないもんな?」
「じっとしてたら、身体も鈍っちまうからさ~。」
何より鍛練大好きなジーナは、仕方なしに修練場にでも行こうかな~…なんて話し始める。
セツもどうだ?って、誘われたけど…それは丁重にお断りしておく。
残念ながら神子としての力はあっても、体力的な素質は一切無いからね。下手に運動し過ぎると、すぐ筋肉痛になっちゃうし…。それなら、本とにらめっこしてる方が良さそうだ。
今は一日でも早く、神子の魔法を自力で扱えるようにならなきゃだしね…。
「ならボクと一緒に魔法の練習しようよ~、セツ!」
むぎゅうと抱き付いてくるロロに提案され、それは良いなと頷く。
ロロは守護騎士の中では最年少でありながら、最も魔法の才能があるわけだし。今までも、魔法の修行で度々お世話になってたから。
何より気難しい本と格闘するより、そっちのが断然気楽なんだもんね~。
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