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「オレは頭使うより体力勝負だかんな、ルーにでも手合わせしてもらおっと~。」 早速とばかりにソファから立ち上がり、談話室の窓際で剣の手入れをするルーの元へ駆け寄るジーナ。 ならそろそろオレも…と、重たい腰を上げて。 ロロに声を掛けようとした瞬間─────── (あ、れ…?…) ドクンと心臓が険しく脈打ち、思わず息が止まる。 ソレはまるで、内側から膨らんでいくかのように…。不快な耳鳴りを伴い、一気に身体中を駆け巡っていく。 その衝動に耐え切れなくなるオレは…胸を抑え、その場に(うずくま)った。 「セツ…どうしたの!?」 突然床に崩れるオレに、近くにいたロロが慌てて駆け寄ると。 異変に気付いたジーナも、すぐに踵を返し…ルー達3人の足音も、バタバタと近付いて来るのが判る。 「あッ…はあっ…」 「セツ…!!」 ルーが跪き、オレの身体を抱き寄せる。  名前を呼ばれはするけれど…呼吸すら儘ならないため。返事すること叶わず、オレはルーの服を無我夢中で掴むと…訳の分からない衝動に必死で耐えた。 (なんだ、コレ…) 血管が逆流するかのような、異常な感覚が身体中を支配し。チカチカと視界がノイズのように暗転する。 次第にそれは、何か別の景色を(かたど)り始め… まるで夢の中のような、不鮮明な映像となって。直接脳内へと、映し出されていった。 「セツ、どうした!どこか痛むのか…?」 「…ぁ……」 目を閉じても、脳裏にが流れ込んでいき。 走馬灯のような速さで、強制的に情報を与えてくる。 (…ああ…ティコ……?) 一瞬で(よぎ)るのに、鮮明に刻み込まれていく映像は。見覚えのある場所を指し示してくる。 それは森への脇道を通り、田畑を越えて。 やがて古びた孤児院に辿り着くと、オレがグリモアとムーバに襲われた小屋のある、森の中を駆け巡って──── 「はッ…ぁ…ラル、ゴ…」 ようやく肩で息継ぎし、ルーがオレを支えて。 みんなが見守る中、オレは(はや)る心を抑え、ゆっくり呼吸を整えていると。ルーが透かさず背中を擦ってくれた。 「あの、時の…小屋にっ…いたんだ…ラルゴ、がっ…」 一気に情報を流し込まれた所為か、現実と混同してしまい。身体に染み付いた恐怖に煽られ、オレは泣きながら譫言(うわごと)のように話す。 「誰かと、話して…た…孤児院を、ティコ達が…」 助けに行かなきゃ…そんな思いに駆られ、立ち上がろうとするけど。足に力が入らず、ルーの腕にまた崩れ落ちてしまう。 突然取り乱したオレに、ルー達は困惑しながら。 なんとも悲痛な面持ちを浮かべていた。

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