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④
「セツ、落ち着くんだ…!」
端から見たら、オレがいきなり乱心し泣き喚いて。さぞ驚いてるだろうけど。
ルーは冷静に、ふらふら立ち上がろうとするオレを止 めようと…強く抱き締めてくる。
「るッ…はや、く…はあッ…ああ…」
「セツ、ゆっくり息をして…心を静めるんだ…」
とんとんと、赤子をあやすように。ルーは背中を優しく擦ってくれる。オレの呼吸に合わせるよう、規則的に穏やかに…。
そうすれば段々とオレも、落ち着きを取り戻していった。
「見えた、んだ…あの場所に、魔族が…」
他にも仲間らしき姿があったけれど。
その姿は影よりも朧気で…確かなことは判らない。
「何か話してて…分かんないけど、」
ラルゴが話す影が、指差す方向。そこは孤児院に繋がって…
直感でしかないけど、そこに向かおうとしてるんじゃないかって。だから、
「行かなきゃ…」
俄 には信じ難いような、唐突過ぎるオレの発言に。皆は険しい表情のまま、頭を抱える。
「…確証はありませんが、所謂“予知”というものではないかと。」
「予知…」
冷静に分析するヴィンの言葉を、反芻する。
もしそれが本当なら。今オレが見たものは…
「それはつまり、セツが視た事が今から起こりうる、ということかい…?」
「もしくは既に起きていること…かもしれません。」
「そんなッ…!」
アシュとヴィンの遣り取りに、悲鳴を上げるオレは。本能的にまた、飛び出して行こうとするけど…
それはやはり、ルーの腕に阻止されてしまう。
「セツ、お前が行ってどうするんだ…!」
「だって…もしかしたらティコ達が、魔族にっ…」
「まだそうと決まったワケじゃねぇだろ!」
ルーとジーナに一喝され、オレは泣きながら項垂れる。
確かにその通りだ。今の映像が、果たして予知なのかも眉唾モノだし…
例えそうだとしても、オレが行ったところで。それこそ神子が、むざむざと殺されに行くようなものだろうから。
それでも、こんなに胸が騒ぐのは…
「る、う…助け、て…」
気のせいかもしれない、ムダなことだと呆れられるかもしれない。
でも確かに、オレの中で何かが訴えてくるんだ。
だけどオレじゃ、どうにもならないから。
縋る思いで、ルーに助けを求めると…
「…案ずるな、セツ。私が行くから。」
まるでオレの心を見透かすように告げるルーファス。無意識に頼ってしまい、今更だけど…
万が一にもルーの身に、何かあったら─────
「オレも、行くっ…」
オレをヴィンに託し、独り行こうとするルーの背中に叫ぶけれど。ルーは振り返り、静かに否定する。
「セツをこれ以上、危険に晒すわけにはいかない。私なら、大丈夫だから…」
お前は此処で待っていろと。ルーは強かに微笑む。
それでもオレには譲りたくない事情があるから。
何が何でも、ついて行こうとしたのだけど…
「ルーひとりじゃ不安なら、俺がついてってやるよ。セツが行くより、百倍マシだろ?」
みかねたジーナが、わざとからかうように手を上げて。オレの肩をポンと軽く叩く。
「だからさ、お姫様は大人しく待っててくれよ。な…?」
「ジーナっ……ありが、と…」
不安はどうしても拭えないけど、ジーナの提案は何よりありがたいし。言ってることは最もだったから…。
オレはジーナに感謝し、ギュッと彼を抱き締めると…その申し出を素直に受け入れるのだった。
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