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「万が一のこともありますし…。オリバー団長でしたら、ご助力頂けるかもしれませんよ。」 早速掛け合ってみましょうかと、ヴィンが提案してくれて。 「その代わり、もし杞憂に終わったら…貴方が直接、謝罪して下さいね?」 「ヴィン…」 「まあ…オリバー団長でしたら、セツがお願いすれば何でも許してくれそうですがね。」 苦笑混じりにそう付け加え、ヴィンも部屋を出ていった。 「良かったね、セツ!オリバー団長だったら絶対助けてくれるだろうし、安心だよ!」 「うん…」 オリバーさんが援軍を出してくれれば、大丈夫だろうと胸を撫で下ろす。 本音はまだ、ルー達を追い掛けたかったけど… アシュが言う通り、オレが行ったって足手纏いになるだけ─── 「あ…っ…」 「セツ…?」 そんな矢先、またも身体の奥が疼き出し。 急激に襲い来るソレに、オレは膝から崩れ落ちてしまう。 (たちま)ち目の前がドクリと脈打ち、眩む頭を抱え踞った。 (いやッ…) 先程の映像と、あの夢が重なり。 嫌なイメージが、オレの心を追い詰める。 手を伸ばしても、ルーファスには届かなくて。 それが空振る瞬間、画面は真っ赤に染まり──── 暗転してしまった。 「ダメ、だ…ッ…」 絶対に行かなきゃ、ダメなんだ。 自分の意思とは違う衝動に促され、起き上がると…オレはまた歩き出す。 「今のキミが行ったところで、どうにもならないよ?」 アシュに腕を捕まれ、引き留められる。 普段は温厚なのに、今は口調も捉える目も全てが厳しい。 「でも、行かなきゃ…」 オレだって痛いほど自覚してる。この世界じゃ、本当に無力だし。今までは偶然にも神子の力が発動して、難を逃れてきたけども… あんな奇跡、そうそう起きるもんじゃないし。まず宛になんか、出来やしないんだろう。 「でもっ、なんでかは分かんないけど…行かなきゃって、オレの中で何かが訴えてるんだ…!」 これも神子の能力だとして…神子の本能が、何かを警告しているのだとしたら? …上手くは言えないけれど、その代わりにオレは真っ直ぐアシュの目を見上げる。 彼も見定めるように。沈黙の中、じっと見つめ返していたけれど… 「いいよ…なら、連れて行ってあげる。」 「アシュ…!」 ダメだよと首を振るロロを、アシュは微笑んで宥める。 「ここはセツを信じてあげよう?」 「でもっ…」 優しく諭され、ロロは一瞬迷いながらも分かったと頷いた。 「ごめんね…ロロ、アシュ…」 結局我が儘を通し、みんなの厚意を無下にしてしまった。 きっと後でルー達に怒られるよな…って、自虐的にぽつりと溢したら。 「いいんじゃない?無事に戻ったら、一緒に叱られようじゃないの。」 悪戯にウインクするアシュに励まされて。 オレはうんと強く返事をし、ルー達の後を急いで追い掛けた。

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