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⑦
雨の中…騎馬を飛ばし、孤児院へと向かう。
雨天用の外套 を羽織ってはいるものの…アシュが、限界まで速度を上げてくれてるから。
霧雨と云えど、突き刺さるように。
オレ達の身体に潸々 と降り注いだ。
オレはアシュの背中にしがみついてるから、マシだけど…手綱を操るアシュや並走するロロは、視界も悪くて大変だろうに。
全くそれを感じさせる素振りも無く。ふたりは軽快に、馬を走らせていた。
孤児院がある村は、聖域に繋がる森の手前…こうしてる間にも、魔の手は迫っているかもしれない。
先に向かったふたりの安否が、気掛かりだけど…
焦ったところで、オレにはどうにもならないから。道中祈るよう目を瞑り、アシュの操る馬に身を委ねた。
「もうすぐだよ、セツ…!」
アシュが前方を向いたまま叫び、オレは目を開けて。霧で儘ならない視界を必死で凝らす。
そうすれば真っ白な景色の先に、ぼんやりとした建物が浮かび上がった。
「ふたりは、孤児院の中かな…」
孤児院の柵を抜け馬から降りると、ゆっくり辺りを見渡して。
相変わらず降る雨音以外、周囲はどんよりとしてはいるものの…不穏な気配は感じられない。
「あそこにふたりの馬がいるよ!」
ロロが指し示す方を、急いで見れば…
確かに、建物付近の柵に。
見覚えのある馬が二頭、並んで繋がれているのが確認できた。
「やけに静かだな…」
子ども達も今日は雨で院内にいるのか…
広場も水溜まりを作り、閑散としていて。
やけに響く水音が、不安な心を煽る。
「とにかく一度、孤児院に行ってみようか。」
ルー達も中に居るようだし、会えば何か分かるかもしれない…と。馬を引きながら、アシュが建物の方へと進み出す。
ロロも同様に、オレもそれに従って。
孤児院に向け、一歩踏み出したが────
(…ッ……!)
違う────瞬間、言葉が頭を過り…オレは思わず森を振り返る。
『セツ…!!』
手綱を握るふたりは反応に遅れ、止まるよう叫んでいたけど…
オレはふたりの制止も聞かず、何かに導かれるままに。森の中へとひとり、駆け出していた。
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