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『こうも早く、バレちまうとはな…』 流れる映像の中、魔族のラルゴが茶化すよう首を竦める。 『神子を(おび)き出すために、態とガキ共を狙えって言われたから…仕方なく来たけどよ。』 それが守護騎士ひとりだけとは… 皮肉を込め魔族は。対峙する人物に向け、愚痴るよう吐き捨てる。 『神子は何処だ?』 『貴様に答える道理はない。』 そう返す蒼髪の騎士は…勿論、ルーファス。 彼の前にはラルゴを含め、数体の魔物が立ちはだかる。 『お前だろ?確かムーバを殺った、騎士ってのは。』 尚も問うラルゴに、答える気の無いルーは黙秘を貫き。対する魔族は、つれねぇなぁと…からかうように苦笑っていた。 『…神子を誘き寄せると言っていたが、そのために孤児院を狙っていたのか?』 『あ…?テメエは何も答えねぇクセに…』 今度はルーが問い質すと、ラルゴは呆れたように声を荒げたが…その問いにはすんなりと口を割る。 『ああ。ムーバが勝手に人間とつるんで、色々やってたからな。そんで神子がここのガキ共を贔屓してるとか、言ってたから…』 ガキを襲えば、神子が来るかもしれない────それはあくまでムーバが、独断で進めていた計画のひとつだったが、と…ラルゴはつまらなそうに付け加える。 『が、これを利用しようってギャーギャーうるせぇからよ。』 あまり乗り気ではなかったのか。 ラルゴは先程からずっと、投げやりな態度で問われた以上の事を喋っている。 …かと思えば、次にはルーに向けて。ニタリと不敵に笑ってみせるのだった。 『…そんなことより、俺はよ?ムーバを殺ったお前に興味あんだよ。その方が、少しは楽しめそうだろ…?』 挑発的に手招きするラルゴに、ルーは全く動じることなく。冷ややかな表情のまま、じっとラルゴを見据えている。 『勿論、サシでな。』 『魔物を引き連れておいて、戯れ言だな…』 あくまでタイマンを主張するラルゴだったが… ルーは冷静に、自身を囲む魔物を見渡しては指摘する。 『これはが勝手に寄越してきただけで。俺の趣味じゃねぇんだよ。』 ラルゴは手出しはさせないと断言するも。 魔族の言うことを真に受けるほど、ルーも愚かではないはず…。 それでも、暫し睨み合った後… 『…ならば、受けて立とう。』 手に掛けていた剣を、すらりと抜き放った。 ラルゴも嬉々としてあの、巨大な戦斧を構える。 魔族の言葉を、そのまま鵜呑みにするのは危険だと思うけど… ルーの性格上、例え相手が敵であっても…騎士道の礼節を(わきま)える辺りがなんとも彼らしい。 でもやっぱり、油断しちゃダメなんだ─────

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