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⑩
『さて…そろそろお喋りは終いにしねぇと…アイツらを待たせ過ぎると、なに仕出かすか分かんねぇからな…』
ラルゴの台詞に、オレの胸騒ぎは加速して。
周囲へと意識を戻す。
雨天により森の中は、前回来た時よりも更に薄暗く霧で囲まれ…視界も良くはない。
それでもオレが迷わず進めるのは、道を覚えているから…じゃなくて。何故か本能的に、進むべき方角が判ったからだった。
「はぁ…あッ…!」
とはいえ、慣れない森の中を走るのは困難で。
オレは何度も木の根や泥濘 に足を取られ、転倒してしまう。
身体メチャクチャ痛いし、泥だらけになるけど…オレは無我夢中でルーがいる場所を目指し、走った。
(ルー……!)
ラルゴの言葉が本当なら。
まだ仲間の魔族がいるはず…少なくとも2人以上は、確実に。
未だに姿は見えないから…きっとまだ、何処かに潜んでいているに違いない。
(あと、少し…)
遠目にも、あの小屋がある拓けた場所が木々の隙間から見えてきて。オレはそこで立ち止まり、小屋の周囲を見渡す。
小屋の近くには、小さいながらもルーとラルゴと思しき姿が見て取れ…
更に目を凝らすと。
半壊した小屋の裏手、隠れるよう茂みに潜む影がふたつ、視界に入り…
(アイツらが…)
ルーとラルゴの遣り取りに気を取られているからか、幸いにもオレの存在に気付く様子はなく。オレは迂回するように、人影の方へと近付く。
雨の中、紛れるよう慎重に…息を潜めて。
そうすれば段々と人影の正体が、見えてきた。
(え…こど、も…?)
しかも瓜二つ、の。
ロロ…いやティコとさほど変わらない年頃の、まだ幼い少年のようなふたりを目の当たりにし。動揺が走る。
しかし、幼い顔つきでルーとラルゴの一騎打ちを傍観する彼らは…その愛らしい顔立ちには不釣り合いな、酷く冷めた笑みを湛えており。
何か耳打ちし合っては、コロコロと無邪気に笑っていた。
そして徐に、ひとりの少年がルーの方へと掌を翳して。何かしらの魔法を、発動させようとしたから────
「やめろッ…!!」
オレは自ら大声で叫び。
ふたりの意識を、此方へと向けさせた。
「はあッ…は…っ…」
少年らの目前まで来て、オレは立ち止まる。
ずっと走りっぱなしだったから…
足は鉛みたいに重く、息苦しさに呼吸すら儘ならない。それでも自身を奮い起たせ、オレは少年らをじっと見据えた。
そんなオレを認めたふたりは、なんとも無慈悲な笑みを浮かべる。
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