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⑪
「あれあれ?コイツ神子だよね~、ルナー?」
比較的、髪が短い方の少年が告げると。
先程ルーに魔法を放とうとした、髪を束ねている方の少年がクスクスと笑う。
「うんうん。きっとそうだよ~、コナー。」
双子、なんだろうか…
少年達は灰色の髪型以外、殆ど同じ容姿をしていて。耳は尖り、浅黒い肌色は…魔族の特徴を彷彿とさせる。
彼らは大きく黒目がちな瞳を輝かせると、興味津々とばかりにオレを観察してきた。
「コイツが死んじゃえば…ジークもきっと喜ぶよね、ルナー?」
「そうだね、コナー。神子が死ねば、ジークがもっともっと強くなってさ。人間なんか、あっという間にやっつけちゃうよ。」
どうやら短い髪の子がコナーで、長い子がルナーらしい。
そんなあどけなさの残る、鈴のような声音で。
双子の少年達は、なんとも物騒な話をし始める。
「ならコイツはボクが殺すからさ。ルナーはあの騎士を殺してくれない?」
言ってコナーがオレへと近付く。
武器も持たない小さな少年は、両手に籠手を嵌めており…身軽そうなその雰囲気から、おそらくジーナに似た戦闘スタイルじゃないかと推察する。
逆にルナーは、例えば神官なんかが装備してるイメージの…細身のハンマーみたいな武器を手にしていたので。
さっき何かしらの魔法を使おうとしていたとこを見ると…魔術系統に、精通してるんじゃないだろうか。
「させない…!!」
コナーに言われ…すぐに魔力を溜め始めるルナーに叫び、駆け出す。
疲弊した身体は上手く機能しないけど…
それでもオレは、全力で走った。
「なあなあ、そんなヘロヘロでさあ…」
邪魔する様子もなく、傍観して嘲笑うコナーは。
オレがたった独りきりだと知ってか、すんなりと通してくれる。
「させない…」
よろけつつも、なんとかルナーの前に立ちはだかるオレは、遠目のルーを隠すよう両手を広げ。
魔法を発動する少年は、冷笑と舌打ちを同時に溢した。
「邪魔しないでよ。それともお前が先に死ぬの?」
「死ぬ気はないし…死なせない。」
不利な状況では、何の説得力もないオレの言葉。
オレなんかが魔族…しかもふたりも相手に出来るだなんて。思ってもいないし、無駄な悪足掻きでしかないんだろう。
それでも…
「オレは神子だから。ルーを…みんなを守らなきゃダメなんだ…」
世界中の人々を────なんて壮大なことは言えない。
所詮オレも一個人、神子だなんだ言われても聖人君子じゃないんだから。嘘でも世界平和を願います、なんて大口は叩けないよ。
でもね…
こんな小っちゃな人間にも、守りたいものがあるんだ。
今のオレは、ただひとつの想いのためだけ。
それを叶えるためには世界を救わなきゃならないって、言うのならば…
「まだカンペキに目覚めたわけじゃないクセに。口だけは達者なんだねぇ~。」
つまらないとでも言いたげに、ルナーはオレを睨み付ける。
その間にも、此方にに向けられた手には。
魔力の込められた青白い光球が、どんどん形成されていき────…
「なら…死んで後悔しなよ!」
叫び魔力の砲弾を、解き放った。
「セツ───…!!」
随分後ろから、オレを呼ぶ声が聞こえるけれど。
振り返らない。
(大丈夫…)
根拠のない自信に、オレは両手を広げたまま…
向かい来る衝撃に備える。
巨大に膨れ上がったそれは。
肌で感じるほどの、凄まじい力を内に秘めていて。
ルナーはオレを殺すつもりだし。
当たったら、無事では済まないだろな…
(ルーは、絶対に死なせない…)
無意識に両手を前に翳 し、放たれた冷たい光球を受け止める。と…
手に圧が掛かった途端、全身が凍り付くかのような衝撃に襲われ。
「セツ…!!」
さっきまで遠かった声が、すぐ傍まで届けられた瞬間に。
(あ───)
オレの視界と意識は、丸ごと光に包み込まれ…
途切れた。
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