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「あれあれ?コイツ神子だよね~、?」 比較的、髪が短い方の少年が告げると。 先程ルーに魔法を放とうとした、髪を束ねている方の少年がクスクスと笑う。 「うんうん。きっとそうだよ~、。」 双子、なんだろうか… 少年達は灰色の髪型以外、殆ど同じ容姿をしていて。耳は尖り、浅黒い肌色は…魔族の特徴を彷彿とさせる。 彼らは大きく黒目がちな瞳を輝かせると、興味津々とばかりにオレを観察してきた。 「コイツが死んじゃえば…もきっと喜ぶよね、ルナー?」 「そうだね、コナー。神子が死ねば、がもっともっと強くなってさ。人間なんか、あっという間にやっつけちゃうよ。」 どうやら短い髪の子がコナーで、長い子がルナーらしい。 そんなあどけなさの残る、鈴のような声音で。 双子の少年達は、なんとも物騒な話をし始める。 「ならコイツはボクが殺すからさ。ルナーはあの騎士を殺してくれない?」 言ってコナーがオレへと近付く。 武器も持たない小さな少年は、両手に籠手を嵌めており…身軽そうなその雰囲気から、おそらくジーナに似た戦闘スタイルじゃないかと推察する。 逆にルナーは、例えば神官なんかが装備してるイメージの…細身のハンマーみたいな武器を手にしていたので。 さっき何かしらの魔法を使おうとしていたとこを見ると…魔術系統に、精通してるんじゃないだろうか。 「させない…!!」 コナーに言われ…すぐに魔力を溜め始めるルナーに叫び、駆け出す。 疲弊した身体は上手く機能しないけど… それでもオレは、全力で走った。 「なあなあ、そんなヘロヘロでさあ…」 邪魔する様子もなく、傍観して嘲笑うコナーは。 オレがたった独りきりだと知ってか、すんなりと通してくれる。 「させない…」 よろけつつも、なんとかルナーの前に立ちはだかるオレは、遠目のルーを隠すよう両手を広げ。 魔法を発動する少年は、冷笑と舌打ちを同時に溢した。 「邪魔しないでよ。それともお前が先に死ぬの?」 「死ぬ気はないし…死なせない。」 不利な状況では、何の説得力もないオレの言葉。 オレなんかが魔族…しかもふたりも相手に出来るだなんて。思ってもいないし、無駄な悪足掻きでしかないんだろう。 それでも… 「オレは神子だから。ルーを…みんなを守らなきゃダメなんだ…」 世界中の人々を────なんて壮大なことは言えない。 所詮オレも一個人、神子だなんだ言われても聖人君子じゃないんだから。嘘でも世界平和を願います、なんて大口は叩けないよ。 でもね… こんな小っちゃな人間にも、守りたいものがあるんだ。 今のオレは、ただひとつの想いのためだけ。 それを叶えるためには世界を救わなきゃならないって、言うのならば… 「まだカンペキに目覚めたわけじゃないクセに。口だけは達者なんだねぇ~。」 つまらないとでも言いたげに、ルナーはオレを睨み付ける。 その間にも、此方にに向けられた手には。 魔力の込められた青白い光球が、どんどん形成されていき────… 「なら…死んで後悔しなよ!」 叫び魔力の砲弾を、解き放った。 「セツ───…!!」 随分後ろから、オレを呼ぶ声が聞こえるけれど。 振り返らない。 (大丈夫…) 根拠のない自信に、オレは両手を広げたまま… 向かい来る衝撃に備える。 巨大に膨れ上がったそれは。 肌で感じるほどの、凄まじい力を内に秘めていて。 ルナーはオレを殺すつもりだし。 当たったら、無事では済まないだろな… (ルーは、絶対に死なせない…) 無意識に両手を前に(かざ)し、放たれた冷たい光球を受け止める。と… 手に圧が掛かった途端、全身が凍り付くかのような衝撃に襲われ。 「セツ…!!」 さっきまで遠かった声が、すぐ傍まで届けられた瞬間に。 (あ───) オレの視界と意識は、丸ごと光に包み込まれ… 途切れた。

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