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「そうか…」 安堵したように力無く呟くルーファス。 しかし次には目を細め、悲痛な表情を浮かべる。 「だがそれは…セツの意志で発動した力では、ないのだろう?」 「…う、うん…そうだけど…」 ならばどうしてこの場にいるのか… 何故、自分を庇うような真似をしたのか? ルーは今まで向けたことのないような、厳しい表情で以て、オレを見据える。 「だって、視えたんだ!…ルーが危ないって。だからっ…」 「例えそれが事実だとして。神子が盾たる守護騎士の私を守って、どうするというのだ?」 戦う術を持つ自分ならば、不意打ちを食らっても対処出来たかもしれない。 しかし生身の…裸同然のオレが、あんな危険な選択をすれば。無謀でしかないだろうと、ルーは冷ややかに告げる。 「私は、お前の為なら命など惜しまない。その意思は決して…守護騎士としての責だけではないんだ。」 セツだからこそ、護りたい。 悲しませたくない、傷付けたくない、と。 ルーは切実に訴えてくる。 その気持ちはすごく嬉しいよ。 けどね、同じくらいに…オレには痛いほど、理解出来るんだ。 「…オレだって、守りたいんだよ…!」 「セツ…」 ルーはオレのことを、何よりも大切に想ってくれている。けどオレだって…その想いに負けないぐらい、ルーのことが好きだから。 そりゃ、こうして助かったから言えるだけであって。ルーの言い分は最もだけどさ… 「オレがルーを行かせたから、こんなことになっちゃったけどッ…オレだって、自分の所為でルーが傷付いたりしたらっ…」 あの夢が、現実になってしまうんじゃないかって。 そうならないために、今まで言いたい言葉を飲み込んで耐え偲んでたのに。 意味無いじゃんか、そんなの… 「オレ独りじゃ…ルーがいなくなっちゃったら、オレ…はッ…」 それこそ生きてはいけない────… 喚くよう必死で訴えれば。 ルーは黙ったまま、オレを抱き締めてくれて。 今はそれを確かめるように。 オレも腕を回し、強く強くしがみついた。 「俺は容易に死んだりなどしない。お前をずっと…生涯掛けて護ると、誓ったのだから…」 だからもう、こんな無茶はしないでくれと。 ルーの悲しそうな声が、耳元に直接伝わってくる。 抱き締める腕は震え、痛いぐらいに強くきつく。 オレを包んで離さないけれど…。 今は甘んじて、それを受け入れていた。

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