197 / 423
⑬
「そうか…」
安堵したように力無く呟くルーファス。
しかし次には目を細め、悲痛な表情を浮かべる。
「だがそれは…セツの意志で発動した力では、ないのだろう?」
「…う、うん…そうだけど…」
ならばどうしてこの場にいるのか…
何故、自分を庇うような真似をしたのか?
ルーは今まで向けたことのないような、厳しい表情で以て、オレを見据える。
「だって、視えたんだ!…ルーが危ないって。だからっ…」
「例えそれが事実だとして。神子が盾たる守護騎士の私を守って、どうするというのだ?」
戦う術を持つ自分ならば、不意打ちを食らっても対処出来たかもしれない。
しかし生身の…裸同然のオレが、あんな危険な選択をすれば。無謀でしかないだろうと、ルーは冷ややかに告げる。
「私は、お前の為なら命など惜しまない。その意思は決して…守護騎士としての責だけではないんだ。」
セツだからこそ、護りたい。
悲しませたくない、傷付けたくない、と。
ルーは切実に訴えてくる。
その気持ちはすごく嬉しいよ。
けどね、同じくらいに…オレには痛いほど、理解出来るんだ。
「…オレだって、守りたいんだよ…!」
「セツ…」
ルーはオレのことを、何よりも大切に想ってくれている。けどオレだって…その想いに負けないぐらい、ルーのことが好きだから。
そりゃ、こうして助かったから言えるだけであって。ルーの言い分は最もだけどさ…
「オレがルーを行かせたから、こんなことになっちゃったけどッ…オレだって、自分の所為でルーが傷付いたりしたらっ…」
あの夢が、現実になってしまうんじゃないかって。
そうならないために、今まで言いたい言葉を飲み込んで耐え偲んでたのに。
意味無いじゃんか、そんなの…
「オレ独りじゃ…ルーがいなくなっちゃったら、オレ…はッ…」
それこそ生きてはいけない────…
喚くよう必死で訴えれば。
ルーは黙ったまま、オレを抱き締めてくれて。
今はそれを確かめるように。
オレも腕を回し、強く強くしがみついた。
「俺は容易に死んだりなどしない。お前をずっと…生涯掛けて護ると、誓ったのだから…」
だからもう、こんな無茶はしないでくれと。
ルーの悲しそうな声が、耳元に直接伝わってくる。
抱き締める腕は震え、痛いぐらいに強くきつく。
オレを包んで離さないけれど…。
今は甘んじて、それを受け入れていた。
ともだちにシェアしよう!