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「約束だからね…?ルーも絶対、無茶しないって…」 「信じて貰えないのか…?」 オレが何度も念押しすると、苦笑するルー。 信じてないわけじゃないけど… 何か、安心出来るような確証が欲しかったから… 「じゃあ、さ…もういっかい、してよ…」 何を?と視線で問われ、オレはしどろもどろ答える。 「あれ…騎士の、誓いのキスを…さ…」 お願い…と、ちらと見上げると。 ルーは目を見開き固まってしまったが… 「セツがお望みとあらば…」 ふわりとはにかむと、オレの手を取り跪いた。 オレはそれを待ってと告げ制する。 「そのっ、出来れば手じゃなくて…」 どうしようかと迷いながら…オレは大胆な行動に出る。 「ここじゃ、ダメ…?」 言って自分の唇に触れてみせる。 我ながら、どうかしてると解ってはいたけれど。 いつもの誓いだけじゃ、 物足りないとか、思ってしまったから… 「せ…っ…」 「ね…誓って?絶対死なないって、オレの傍にずっといるって…」 気休めでもいい。 ルーの口から宣言して、キスで誓いを立てて欲しい。 アシュが言ってた、言葉には力があるって。 オレの世界にも言霊って概念はあったから。 形で示せば…御守りの変わりぐらいには、なるんじゃないかって… ルー、困ってる。 でもゴメンね…オレ、ズルいからさ… 「…我、ルーファス・ディオンは此処に誓う。」 ルーがオレを、とことん甘やかしてくれることを…知ってるから。 「神子セツの名のもと、いつ如何なる時も我が身命(しんめい)の生涯を以て共に永らえ、守護することを…この口付けに…」 オレが欲しがれば、 お前はちゃんと応えてくれるんだ。 「ん……ふ…ぁ…」 両頬をその手に包み込み、唇が触れる瞬間。 伏し目がちにルーに捕らえられ、探るように…舌先がオレの唇をなぞる。 応えてオレは僅かに開くことで、それを許し。 ソレはゆっくりと深く、咥内へと挿し込まれた。 誓いのキスと謳いながら、 最初から絡められる舌と舌。 確かめ合うよう互いをなぞり、きつくきつく吸い取って… 優しいのに、理性を溶かすような痺れと快感に。 今は何もかも忘れ、貪った。 「は…セツ…ッ…」 「…んッ…ぁ…」 欲しい、目の前のこの男が…ただそれだけ。 なんて欲深いんだろう、解っているのに思考は都合よくも働かない。 大胆に乱れるキスは、オレの心をとろとろにふやかし。誓いとか関係なくオレは、ルーに甘え…溺れていった。 そんな愚かな自分に、罪悪感を抱きながら。 「はぁっ…ごめ、るう…ッ…」 「セツ…何故、泣くんだ…」 キスの途中で泣き出すオレの目尻に、ルーがキスを落とす。 「だっ、て…キスなんか、しちゃ…ダメなのにっ…」 自らねだっておいて、 オレは平気で矛盾を口にする。 それでもルーはオレを責めもせず、 黙って髪を撫でてくれて。 こんなにもお前が甘やかすから… オレは簡単に、絆されてしまうんだよ。 「ごめん…オレ、言えないから…」 肝心な事はひた隠し、戯ればかりを欲しがる。 強くなろうと決めたのに。 本気で好きになればなるほど、人は脆くなってしまうのかと。 何をやってるのか… 自分でもわけが解らなくなるよ。 「セツ…」 「ごめ…ごめんなさいっ…」 譫言(うわごと)のように繰り返す謝罪を。 ルーは流るる涙ごと、その手で閉じ込めて。 「良いんだ…例え言葉に、紡げずとも…」 囁いてルーファスは顔を寄せ… オレの唇をもう一度だけ、深く塞いでくれたんだ。

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