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⑭
「約束だからね…?ルーも絶対、無茶しないって…」
「信じて貰えないのか…?」
オレが何度も念押しすると、苦笑するルー。
信じてないわけじゃないけど…
何か、安心出来るような確証が欲しかったから…
「じゃあ、さ…もういっかい、してよ…」
何を?と視線で問われ、オレはしどろもどろ答える。
「あれ…騎士の、誓いのキスを…さ…」
お願い…と、ちらと見上げると。
ルーは目を見開き固まってしまったが…
「セツがお望みとあらば…」
ふわりとはにかむと、オレの手を取り跪いた。
オレはそれを待ってと告げ制する。
「そのっ、出来れば手じゃなくて…」
どうしようかと迷いながら…オレは大胆な行動に出る。
「ここじゃ、ダメ…?」
言って自分の唇に触れてみせる。
我ながら、どうかしてると解ってはいたけれど。
いつもの誓いだけじゃ、
物足りないとか、思ってしまったから…
「せ…っ…」
「ね…誓って?絶対死なないって、オレの傍にずっといるって…」
気休めでもいい。
ルーの口から宣言して、キスで誓いを立てて欲しい。
アシュが言ってた、言葉には力があるって。
オレの世界にも言霊って概念はあったから。
形で示せば…御守りの変わりぐらいには、なるんじゃないかって…
ルー、困ってる。
でもゴメンね…オレ、ズルいからさ…
「…我、ルーファス・ディオンは此処に誓う。」
ルーがオレを、とことん甘やかしてくれることを…知ってるから。
「神子セツの名のもと、いつ如何なる時も我が身命 の生涯を以て共に永らえ、守護することを…この口付けに…」
オレが欲しがれば、
お前はちゃんと応えてくれるんだ。
「ん……ふ…ぁ…」
両頬をその手に包み込み、唇が触れる瞬間。
伏し目がちにルーに捕らえられ、探るように…舌先がオレの唇をなぞる。
応えてオレは僅かに開くことで、それを許し。
ソレはゆっくりと深く、咥内へと挿し込まれた。
誓いのキスと謳いながら、
最初から絡められる舌と舌。
確かめ合うよう互いをなぞり、きつくきつく吸い取って…
優しいのに、理性を溶かすような痺れと快感に。
今は何もかも忘れ、貪った。
「は…セツ…ッ…」
「…んッ…ぁ…」
欲しい、目の前のこの男が…ただそれだけ。
なんて欲深いんだろう、解っているのに思考は都合よくも働かない。
大胆に乱れるキスは、オレの心をとろとろにふやかし。誓いとか関係なくオレは、ルーに甘え…溺れていった。
そんな愚かな自分に、罪悪感を抱きながら。
「はぁっ…ごめ、るう…ッ…」
「セツ…何故、泣くんだ…」
キスの途中で泣き出すオレの目尻に、ルーがキスを落とす。
「だっ、て…キスなんか、しちゃ…ダメなのにっ…」
自らねだっておいて、
オレは平気で矛盾を口にする。
それでもルーはオレを責めもせず、
黙って髪を撫でてくれて。
こんなにもお前が甘やかすから…
オレは簡単に、絆されてしまうんだよ。
「ごめん…オレ、言えないから…」
肝心な事はひた隠し、戯ればかりを欲しがる。
強くなろうと決めたのに。
本気で好きになればなるほど、人は脆くなってしまうのかと。
何をやってるのか…
自分でもわけが解らなくなるよ。
「セツ…」
「ごめ…ごめんなさいっ…」
譫言 のように繰り返す謝罪を。
ルーは流るる涙ごと、その手で閉じ込めて。
「良いんだ…例え言葉に、紡げずとも…」
囁いてルーファスは顔を寄せ…
オレの唇をもう一度だけ、深く塞いでくれたんだ。
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