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「はあ~…」 「ふふ…今回の説教は長かったな。」 反省会という名の説教は、 まず今日あったことに関する報告から始まった。 オレが視た通り、魔族が孤児院を襲おうとしてたこと。双子の魔族の少年、コナーとルナーという新たな脅威の出現。 そして魔族の王の名が、“ジーク”であるということ等々…今日一日で、様々な情報が駆け巡った。 オレが視た予知能力や、治癒魔法もそう… 神子の扱う奇跡は、神子によって異なるらしいから。 ヴィンも興味深げにしてたっけ。 魔法を素手で受け止めようとして、死にかけたのがバレた時は…ヴィンだけじゃなく、みんなからもメチャクチャ怒られたけどね…。 とにかく、魔族の王の名がこちら側の耳にも届いたということは…向こうの動きも、相当活発になってる証拠だから。 とりあえずは明日、ヴィンがアリシア様に直接報告するとのことなので。引き続き警戒するようにと、口酸っぱく忠告された。 なんだかんだ言いながら、ヴィンもやっぱりオレを気遣ってくれて。 みんなも雨の中で魔物と戦い、疲労もあるだろうからと。思ったよりは早く反省会は切り上げられた。 むしろしっかり休むようにと、オレにだけしつこく言ってきたし…そんな信用ないんだなって。 まあ、自業自得だから仕方ないんだけどね… 「ヴィンはセツを思ってのことだから。アイツがあれだけ気遣うのは、セツぐらいのものだぞ?」 「うーん…そうなのかな~。」 ルーはヴィンと親友だから、その性格を最も理解してるんだろう。ふたりとも優等生っていうか、根が真面目だし。意外と気が合うよね。 ルーに付き添われ、自室へと向かいながら他愛のない会話をする。これもいつもの…この世界に来てからの、日課みたいなもの。 朝はルーの声で目覚め。夜眠るまでの束の間、オレの部屋でお喋りしたりして。 なんてことない日常を無事、迎えられたことに…感謝する。 …けれど、今夜は少しだけ違って… 「では、私はここで…」 「え…?」 何故かルーは部屋には入らず、 扉の前まで来ておやすみと告げてくる。 「なんで?寄ってかないの…?」 きょとんとするオレを見下ろし、ルーは言葉を詰まらせたが… 「いや、セツも今日は疲れているだろうし…ヴィンにも早く休むよう、言われていたからな…」 最もらしい言い訳をするけれど。 嘘が苦手なルーは、ソワソワとしていて…なんだか様子が変だ。 そんなルーにオレは、悪戯心を抱いてしまい… 「いーじゃんか…オレまだ眠くないし…」 言ってくいっと…ルーの袖を引っ張る。 そういうことすると、ルーはすぐ赤くなるから…なんか可愛い。 「だがっ…」 「なんだよ、いつもは遅くまで居座るクセにさ…」 それでも頑ななルー。 オレが態とらしく頬を膨らませると、今度は困ったようくしゃりと髪を掻き上げた。 「私とて、そう我慢が利く方では無いんだ…」 「る…う…?」 解ってくれと…視線だけで訴えるルーの目が、少しだけ野性味を帯びて見え… 思わずドキリとして固まる。 「だから今夜は、すまない…」 オレが真っ赤になって俯いてる隙に、ルーは踵を返して。すぐ向かいの自室へと帰ろうとする。 …が、懲りないオレは、無意識にその背中を追い掛けてしまい。振り返るルーは、大きな溜め息を漏らした。

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