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③
「はあ~…」
「ふふ…今回の説教は長かったな。」
反省会という名の説教は、
まず今日あったことに関する報告から始まった。
オレが視た通り、魔族が孤児院を襲おうとしてたこと。双子の魔族の少年、コナーとルナーという新たな脅威の出現。
そして魔族の王の名が、“ジーク”であるということ等々…今日一日で、様々な情報が駆け巡った。
オレが視た予知能力や、治癒魔法もそう…
神子の扱う奇跡は、神子によって異なるらしいから。
ヴィンも興味深げにしてたっけ。
魔法を素手で受け止めようとして、死にかけたのがバレた時は…ヴィンだけじゃなく、みんなからもメチャクチャ怒られたけどね…。
とにかく、魔族の王の名がこちら側の耳にも届いたということは…向こうの動きも、相当活発になってる証拠だから。
とりあえずは明日、ヴィンがアリシア様に直接報告するとのことなので。引き続き警戒するようにと、口酸っぱく忠告された。
なんだかんだ言いながら、ヴィンもやっぱりオレを気遣ってくれて。
みんなも雨の中で魔物と戦い、疲労もあるだろうからと。思ったよりは早く反省会は切り上げられた。
むしろしっかり休むようにと、オレにだけしつこく言ってきたし…そんな信用ないんだなって。
まあ、自業自得だから仕方ないんだけどね…
「ヴィンはセツを思ってのことだから。アイツがあれだけ気遣うのは、セツぐらいのものだぞ?」
「うーん…そうなのかな~。」
ルーはヴィンと親友だから、その性格を最も理解してるんだろう。ふたりとも優等生っていうか、根が真面目だし。意外と気が合うよね。
ルーに付き添われ、自室へと向かいながら他愛のない会話をする。これもいつもの…この世界に来てからの、日課みたいなもの。
朝はルーの声で目覚め。夜眠るまでの束の間、オレの部屋でお喋りしたりして。
なんてことない日常を無事、迎えられたことに…感謝する。
…けれど、今夜は少しだけ違って…
「では、私はここで…」
「え…?」
何故かルーは部屋には入らず、
扉の前まで来ておやすみと告げてくる。
「なんで?寄ってかないの…?」
きょとんとするオレを見下ろし、ルーは言葉を詰まらせたが…
「いや、セツも今日は疲れているだろうし…ヴィンにも早く休むよう、言われていたからな…」
最もらしい言い訳をするけれど。
嘘が苦手なルーは、ソワソワとしていて…なんだか様子が変だ。
そんなルーにオレは、悪戯心を抱いてしまい…
「いーじゃんか…オレまだ眠くないし…」
言ってくいっと…ルーの袖を引っ張る。
そういうことすると、ルーはすぐ赤くなるから…なんか可愛い。
「だがっ…」
「なんだよ、いつもは遅くまで居座るクセにさ…」
それでも頑ななルー。
オレが態とらしく頬を膨らませると、今度は困ったようくしゃりと髪を掻き上げた。
「私とて、そう我慢が利く方では無いんだ…」
「る…う…?」
解ってくれと…視線だけで訴えるルーの目が、少しだけ野性味を帯びて見え…
思わずドキリとして固まる。
「だから今夜は、すまない…」
オレが真っ赤になって俯いてる隙に、ルーは踵を返して。すぐ向かいの自室へと帰ろうとする。
…が、懲りないオレは、無意識にその背中を追い掛けてしまい。振り返るルーは、大きな溜め息を漏らした。
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