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④
「セツ…」
「だって────…あ、」
離れたくないんだもん、とか。
危うく爆弾を投げ掛けて。その時ルーの部屋の扉が目に留まり…ハッとして閃く。
そこでオレは、あることに気がついて…
「えへへ~…」
「な、なんだ…?」
途端にニヤニヤし出すオレを見て、ルーが訝しげに眉をひそめるけど。
そんなコイツを置き去りに、オレは目の前に映る扉へと手を掛けた。
「じゃあ今日は、ルーの部屋に行こっかな~。」
「………は?」
ルーが応える間も与えず。
オレは勝手に扉を開けると、スタスタと中へ入って行く。
「なんだ、普通にしてんじゃん~。」
そう、ここに来てから初めて気付いたけど。
オレって一度もルーの部屋に行ったこと、無かったんだよね~。
いつもはルーが、オレの部屋に来てくれてたからさ。
何度か入ろうとしたことは、あったにはあったんだけど…
ルーには『男児の部屋に無闇に入るのは良くない』とか…意味不明な言い訳されて。なんやかんや断られてたっけ。
だから意外と部屋が散らかってるとか…
何か理由があんのかな~とかは、思ってたんだけど。
ルーの性格からして、汚部屋を隠してるなんてあり得ないからね。基本的にはメイドさん達が、毎日綺麗にしてくれてるんだし。
単に恥ずかしいだけとか、プライベートな空間へ、他人を踏み込まれたくないだとか。そういう意味なのかもしれない。
…オレの部屋には勝手に入って来てるんだから。
それが理由だと、ちょっと腑に落ちないけどさ。
「こっちの部屋のが、少しだけ狭いんだな~。」
ルーの部屋も、屋敷の外観通り豪華な作りではあるものの…家具とかベッドとかは、オレの部屋よりシンプルで物も少なく感じる。
広さもひとり部屋にしたら、かなり広いとは思うけども。なんたって神子であるオレの部屋が、広すぎるもんだから…比較も難しいところだ。
でも、どっちかって言うなら…
「こっちの部屋の方が、なんか落ち着くなぁ…」
「こ…こら、セツっ…」
へへ~と笑い、遠慮なくルーのベッドへダイブする。
シーツや布団は、毎日メイドさん達が替えてくれてるだろうから。洗い立ての匂いしかしなかったけど。
部屋自体の空気が、なんとなくルーの匂いがして…つい、ドキドキしてしまった。
背後からまた、ルーの重たげな溜め息が耳に届く。
「セツ…お願いだから、余り私を煽らないでくれ…」
そう言ってオレの靴を脱がす辺り、律儀だなぁと苦笑う。
「だってオレの部屋広すぎて、落ち着かないんだもん…」
言いながら、枕に顔を埋 める。
ルーのベッドだって思ったら、ホントは落ち着かないはずなんだけど…
なんだか、安心する。
「セツ…眠るなら部屋へ戻ろう?」
「ん~…分かってるよ…」
居心地良すぎてウトウトしだすオレは。
既に動く気もなくなり、ルーのベッドで子どもみたくゴロゴロと寝返りし始める。
「セツ…」
「ん~…あと5分だけ…」
お願いって…説得力の無い生返事をするオレに。
ルーは3度目の溜め息を吐き出し…
その間にも、オレは睡魔に襲われて。
ゆっくりと夢の中に誘われようとしていたのだけど────
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