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「セツ…」 「だって────…あ、」 離れたくないんだもん、とか。 危うく爆弾を投げ掛けて。その時ルーの部屋の扉が目に留まり…ハッとして閃く。 そこでオレは、あることに気がついて… 「えへへ~…」 「な、なんだ…?」 途端にニヤニヤし出すオレを見て、ルーが訝しげに眉をひそめるけど。 そんなコイツを置き去りに、オレは目の前に映る扉へと手を掛けた。 「じゃあ今日は、ルーの部屋に行こっかな~。」 「………は?」 ルーが応える間も与えず。 オレは勝手に扉を開けると、スタスタと中へ入って行く。 「なんだ、普通にしてんじゃん~。」 そう、ここに来てから初めて気付いたけど。 オレって一度もルーの部屋に行ったこと、無かったんだよね~。 いつもはルーが、オレの部屋に来てくれてたからさ。 何度か入ろうとしたことは、あったにはあったんだけど… ルーには『男児の部屋に無闇に入るのは良くない』とか…意味不明な言い訳されて。なんやかんや断られてたっけ。 だから意外と部屋が散らかってるとか… 何か理由があんのかな~とかは、思ってたんだけど。 ルーの性格からして、汚部屋を隠してるなんてあり得ないからね。基本的にはメイドさん達が、毎日綺麗にしてくれてるんだし。 単に恥ずかしいだけとか、プライベートな空間へ、他人を踏み込まれたくないだとか。そういう意味なのかもしれない。 …オレの部屋には勝手に入って来てるんだから。 それが理由だと、ちょっと腑に落ちないけどさ。 「こっちの部屋のが、少しだけ狭いんだな~。」 ルーの部屋も、屋敷の外観通り豪華な作りではあるものの…家具とかベッドとかは、オレの部屋よりシンプルで物も少なく感じる。 広さもひとり部屋にしたら、かなり広いとは思うけども。なんたって神子であるオレの部屋が、広すぎるもんだから…比較も難しいところだ。 でも、どっちかって言うなら… 「こっちの部屋の方が、なんか落ち着くなぁ…」 「こ…こら、セツっ…」 へへ~と笑い、遠慮なくルーのベッドへダイブする。 シーツや布団は、毎日メイドさん達が替えてくれてるだろうから。洗い立ての匂いしかしなかったけど。 部屋自体の空気が、なんとなくルーの匂いがして…つい、ドキドキしてしまった。 背後からまた、ルーの重たげな溜め息が耳に届く。 「セツ…お願いだから、余り私を煽らないでくれ…」 そう言ってオレの靴を脱がす辺り、律儀だなぁと苦笑う。 「だってオレの部屋広すぎて、落ち着かないんだもん…」 言いながら、枕に顔を(うず)める。 ルーのベッドだって思ったら、ホントは落ち着かないはずなんだけど… なんだか、安心する。 「セツ…眠るなら部屋へ戻ろう?」 「ん~…分かってるよ…」 居心地良すぎてウトウトしだすオレは。 既に動く気もなくなり、ルーのベッドで子どもみたくゴロゴロと寝返りし始める。 「セツ…」 「ん~…あと5分だけ…」 お願いって…説得力の無い生返事をするオレに。 ルーは3度目の溜め息を吐き出し… その間にも、オレは睡魔に襲われて。 ゆっくりと夢の中に誘われようとしていたのだけど────

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