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ルーが部屋を出てから、しばらくくして。 オレもよろよろとしながら、自室へ戻ったけれど。 (はぁ…っ…) 一度昂ってしまったモノは、なかなか冷めることはなく。今は無き熱源を求め、オレの心を(むしば)もうとする。 そうなれば所詮はオレも男。 頑なに(たぎ)るソレを、右手に委ねてしまうのは… (さが)であり、必然でしかない。 (はぁ…る、うっ…) 膝が掠めたあの固い感触は、 オレのモノが、そうなってしまうのと同様に。 確かな反応を示しており… それがオレに向けた行為によるものであると、 思い知らされる。 (オレに?…男、なの…に…?) これまで何度も戯れに唇を重ね、触れ合ってきたけれど。 ルーはその度に、あんな風に熱く… オレを求め、感じてくれてたのかな? だったら… (ルー…) オレでさえ、こんなに欲情して。 我慢出来ず、右手を汚そうとしている。 ならルーは? 一度帯びてしまったこの熱を…どうするんだろう? もしアイツも、今この熱をもて余しているのだとしたら──── 想像してしまったら、オレの身体は素直に疼き。それはもう好きだとか、温い言葉だけでは飽き足らず… いっそ心も身体も、全部溶け合うぐらいに奪ってはくれないだろうか…と。 ルーもこんな風に、オレを求めてくれてるのかな…? 「はぁ…ぁッ…」 孤独に汚れていくモノを、右手で握り締め。 罪悪感を覚えながら…一方で、とてつもなく歓喜する自分がいる。 溺れては、ダメ…そう自制を内で謳いながら。 この手は止められず、単純な欲へと付き従う。 (ごめん…ルー…) あんなルー、初めてだった。 いつもはオレに流されてるだけだったのに。 あんな風に、奪われるなんて… オレが思わせ振りなことばかりするから。 色々と追い詰めてしまったのかもしれない…けど。 オレに触れ、キスをして。 確かにアイツは…欲情していた。 その事実だけで、オレの身体は… 従順に、熱くなれる。 ごめんと何度も口にしながら、行為は止まらぬまま。その果てだけを求め、無心になる。 彼女もいた、経験だって人並みにある。 こんな痴情を、全く知らないわけじゃないけれど… 「るっ、う…る…はぁ…ッ…!」 初めてアイツを欲の対象にして、気付かされる。 好きという感情が、どういう意味を持つのかを。 純愛だとか、綺麗なままでは満たされず。 ギラギラと本能にまみれ、尽きることのない欲望を…厭らしくもお前に抱く。 「はぁッ…はっ…ぁ…」 行き場の無い欲の塊を握り締めた途端、冷たくなるそれに虚しさが募る。 そのくせに思考は、馬鹿みたく冷静で。 愛おしい人を想像しては、更に想いを昂らせるから。 「う…ごめッ…なさ…」 オレはまた、ねっとりと冷たくなった右手で。 満たされるはずのない熱を、慰めるのだ。

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