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「ぉ…おはよっ…」 「…ああ、おはよう。」 翌日、気不味くなるのも…必然なわけで。 ふたり顔を合わせるなり、頬を赤く染めては目を逸らす。 ちらりと盗み見たら、また視線がかち合って… そんなことを、早朝からずっと繰り返していた。 だからといって避けるわけじゃないし。 単に意識しまくってるというか… だってオレ、昨日の流れに流し流され…ルーのコトを、そのっ…慰み物にしちゃったからさ。 それこそルーに押し倒された時の、妙に色っぽい表情とか。名前呼ぶ時の掠れた低音とか… 目に焼き付いたソレを、つい思い浮かべながら──── …とまあ、一夜明ければ嫌でも冷静に。 後悔しては、いるんですけども…。 「…………」 「……セツ?」 「ひゃっ…なんでもないよ!」 余所余所しくはあるものの、それ以外は普段通りの爽やかなルー。 けど昨日のコイツは、ちょっと強引で野性的で。 その、男っぽいていうか…オレに対し、あからさまな欲を晒け出してきたわけで…。 (ルーも…) …シたの、かな? コイツだって男だし…なんか想像つかないけども。 オレよりも大人で、婚約者や恋人もいないっていうなら… それで事後処理とか、しない方がおかしいよね? あんな状態で耐えるとか、男だったらそれこそ生殺しだし。 ってことは、やっぱりルーも…なんて想像してたら。ダメと解っていながら、ついつい変な気分になっちゃうじゃんか…。 そんなこんなで、 オレは逃げるように書斎に引きこもっては、適当な本を漁る。 ヴィンはアリシア様のとこだから、好きにしてて良いとは言われてたけど。 これくらいしか、頭冷やす口実もないからなぁ…と、ペラペラと頁を捲っては、外へと視線を送ってみたり。 この感じは、なんか久しぶりだなぁと…独り苦笑しながら見た空は。 昨日の雨が嘘みたいに晴れ渡っていて…露に濡れた緑色を、キラキラと照らし出していた。

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