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(ルー…) 気付いたら、ジーナ達と稽古に励むルーを視線で追い掛けて… うっとりと、その姿に見惚れてしまう。 (こんな好きに、なれるもんなんだなぁ…) 初恋は、記憶にすら残らないくらい曖昧な年頃に体験し…付き合ったのは、アリサちゃんだけだった。 美人で人気者だったアリサちゃんと付き合うってなった当時は…そりゃ嬉しかったさ。 友達からも、メチャクチャ羨ましがられたしね…。 好きという想いに、優劣なんて無いとは思うけれど。今にして、その時の感情が全力だったかと問われたら… オレは違うって、答えるかもしれない。 勿論、ちゃんと好きだった。 フラれてショックを受けたから…こんな所まで来てしまったんだし。 初めての恋人で…女性には奥手な性格も手伝って。 アリサちゃんに対しては、いつも受け身で接していた。 それも自分なりに大切にしたいからと、相手を想ってのことだったんだけど…。 まさか男のルーを相手に、こんな恋する乙女みたいな感じになれちゃうとは… 想像もしなかったよね。 (だって、カッコ良すぎるんだもんなあ…) 初めて会った瞬間から、たぶん始まってたんだと思う。 一目惚れ…なのかな? 自覚はなかったけど、気付いたらもうメチャクチャ好きだったし。 ほんの束の間の時で、 一生分以上の好きをこの身に抱いて。 なんだろうな… 自分でもビックリするぐらい、オレの恋は全力を通り越し…抑え切れないほど暴走しちゃってる。 あのゲームの結末が気になって仕方ないクセに。 ルーを前にすると、すぐ感情に流されてしまうから… ルーにだって、流石にバレちゃってるんだろうな… オレの態度…あからさまだし。 それに、きっとルーも… あんなキスされたらさ… もう自惚れたって、いいと思うんだ。 それを口にすることは、まだ出来ないけれど…。 ルーは優しいから… オレの心を汲み取り、何も言わずにいてくれる。 葛藤もあるだろうに…いつも笑って隣にいて。 気丈に振る舞ってくれる。 我慢してくれてるのはもう、解っちゃったから… (あ、まただ…) 鍛練中は集中してるけど。 休息を取る度、ルーとはこれだけ離れていても… 視線が、合わさってしまう。 オレがずっと見てるから、なんだろうけどさ… それでもアイツが、オレを意識してくれてるのかなって考えたら。 そりゃ、舞い上がっちゃうよね…。 「ダメだぁ~…何にも手につかないや…」 気付くと今日はずっとこんな調子。 手に取った本は進まないどころか、題名さえ儘ならない。 少しでも出来ることをしなきゃと思うのに… ルーという沼にハマったら。 オレはとことんダメ人間になってく気がするなぁ… 「はぁ-…集中、集中…」 頭を振って邪念を払い、本を開く。 ルーとの曖昧な関係の中に、一抹の期待を膨らませる。そうして浮かれるオレは、気付いてなかったんだろう。 例え口にしてなくとも、着実に。手にしてはいけない、その旗を… 自ら、選んでしまっていることに。 そしてそれがもう… 成立しかけている、ということにも。

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