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⑧
(ルー…)
気付いたら、ジーナ達と稽古に励むルーを視線で追い掛けて…
うっとりと、その姿に見惚れてしまう。
(こんな好きに、なれるもんなんだなぁ…)
初恋は、記憶にすら残らないくらい曖昧な年頃に体験し…付き合ったのは、アリサちゃんだけだった。
美人で人気者だったアリサちゃんと付き合うってなった当時は…そりゃ嬉しかったさ。
友達からも、メチャクチャ羨ましがられたしね…。
好きという想いに、優劣なんて無いとは思うけれど。今にして、その時の感情が全力だったかと問われたら…
オレは違うって、答えるかもしれない。
勿論、ちゃんと好きだった。
フラれてショックを受けたから…こんな所まで来てしまったんだし。
初めての恋人で…女性には奥手な性格も手伝って。
アリサちゃんに対しては、いつも受け身で接していた。
それも自分なりに大切にしたいからと、相手を想ってのことだったんだけど…。
まさか男のルーを相手に、こんな恋する乙女みたいな感じになれちゃうとは…
想像もしなかったよね。
(だって、カッコ良すぎるんだもんなあ…)
初めて会った瞬間から、たぶん始まってたんだと思う。
一目惚れ…なのかな?
自覚はなかったけど、気付いたらもうメチャクチャ好きだったし。
ほんの束の間の時で、
一生分以上の好きをこの身に抱いて。
なんだろうな…
自分でもビックリするぐらい、オレの恋は全力を通り越し…抑え切れないほど暴走しちゃってる。
あのゲームの結末が気になって仕方ないクセに。
ルーを前にすると、すぐ感情に流されてしまうから…
ルーにだって、流石にバレちゃってるんだろうな…
オレの態度…あからさまだし。
それに、きっとルーも…
あんなキスされたらさ…
もう自惚れたって、いいと思うんだ。
それを口にすることは、まだ出来ないけれど…。
ルーは優しいから…
オレの心を汲み取り、何も言わずにいてくれる。
葛藤もあるだろうに…いつも笑って隣にいて。
気丈に振る舞ってくれる。
我慢してくれてるのはもう、解っちゃったから…
(あ、まただ…)
鍛練中は集中してるけど。
休息を取る度、ルーとはこれだけ離れていても…
視線が、合わさってしまう。
オレがずっと見てるから、なんだろうけどさ…
それでもアイツが、オレを意識してくれてるのかなって考えたら。
そりゃ、舞い上がっちゃうよね…。
「ダメだぁ~…何にも手につかないや…」
気付くと今日はずっとこんな調子。
手に取った本は進まないどころか、題名さえ儘ならない。
少しでも出来ることをしなきゃと思うのに…
ルーという沼にハマったら。
オレはとことんダメ人間になってく気がするなぁ…
「はぁ-…集中、集中…」
頭を振って邪念を払い、本を開く。
ルーとの曖昧な関係の中に、一抹の期待を膨らませる。そうして浮かれるオレは、気付いてなかったんだろう。
例え口にしてなくとも、着実に。手にしてはいけない、その旗を…
自ら、選んでしまっていることに。
そしてそれがもう…
成立しかけている、ということにも。
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