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「ジー…ク…」 つい先日知ったばかりの名に、身体が震える。 それは魔族の中で最も強いとされる、“王”と名付けられた存在。 ゲームでは魔族側の人物像は曖昧だったから…オレにもその詳細は計り知れない。 それが何故、神子の加護で守られているはずの城壁内…この屋敷に現れたのか… 「お前が、ムーバとラルゴのっ…」 「ああ?アイツらとは随分遊んでたみたいだな。」 そんなことはどうでもいいと、ジークは吐き捨てる。 「なんで俺が…魔族が、此処にいるのかって…」 気になるか?と、問うジークは楽しそうに笑う。 オレが黙って睨み付けていると、魔王は勝手に喋り始めた。 「いくら俺でも…神子の結界ってのは、そう簡単に破れるもんじゃねぇんだがな…」 フェレスティナは、各地に施された神子の結界の中心にあり。城下を囲む壁の内側には、神子が与えた加護が存在しているという。 それは結界として機能し、魔族や魔物の侵入を阻むもので…宮殿敷地内には、更に二重の結界が施されていた。 だから今まで魔族が直接攻めてきたことは無いと、聞かされていたのだが… 「ここの結界は、前の神子が張ったもんだろう?昔の事は知らねぇが…どうもソイツの能力(ちから)が、不安定だったみてぇだな。」 ジークは先代神子の結界が、上手く機能していないのだと告げる。 そういえば…オレが召喚されたのと、先代神子との間隔は。他の神子の時より随分早かったのだと、オリバーさんが話してた気がする。 「魔族本来の力も戻りつつあるし…と言っても、ここじゃ色々と制限されはすんだが…」 挨拶がてら、神子に会いに来たんだ…などと。 ジークはさらりと言ってのける。 そんな話聞いたことも無いし、まずあり得ないだろ… 神子に会うためだけに、わざわざ魔族の王が単身で敵陣地のど真ん中に乗り込んで来るだなんて。 「オレ、を…」 殺しに来たのか…神子の存在が脅威でしかない魔族の、しかも王に。自ら問うだなんて、まさに自殺行為だろうけど。 オレは恐怖心を悟られないようにと。 なるべく毅然(きぜん)とした態度を装った。が… 「最初は…な。」 「ッ…!!」 にやりとほくそ笑み… ジークが掴んだオレの右手を、主張する。 先程まで欲にまみれていたソコを、わざと見せつけるように。 「聖女とも謳われる神子が、まさか男だとは。前例が無いだけに、多少驚きはしたが…」 まだ余韻を纏う手の内は。 恥ずかしくも自慰により、ねっとりとした蜜に濡れていて… ジークはゆっくりと、顔を近付けてくる。 「もっと純潔で、初もんだと勝手に想像してた…だが神子と云えど、中身は所詮人間。俺達と何ら、変わらねぇんだな…」 それこそ、欲に従順な魔族と似ていると。 言ってジークはあろうことか、その長い舌で俺の右手を…舐めてきて。 ピチャ…と態とらしく音を立てられ。 嫌悪するオレは、ゾワリと肌を粟立てた。

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