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「っ…るう…!」 「退()け…!!」 「チッ…」 バンッと弾かれたように扉が開け放たれた瞬間。 部屋を追おう闇に、亀裂が走り。 「ルー…!」 まさか“小細工”とやらが破られるとは、思わなかったのか… 想定外の侵入者に、ジークリッドは一瞬面食らった表情を浮かべるものの…すぐに冷静さを取り戻した。 「の術を破るとは───…いや、これも神子の力か…」 ジークリッドがぽつりと溢し、オレを見やれば。 ルーはそれを遮って立ちはだかる。 「貴様…魔族が、どうやって此処に…」 「ルー、そいつがだっ…!」 魔族の侵入に、眉間を険しくさせるルーファス。 オレが魔王だと告げると、目を見開き剣を構え直した。 「コイツが…」 まさかのタイミングでの、魔王(ラスボス)出現に。 ルーも内心、信じがたいのか…訝しげに呟く。 「…どうやら入って来れたのは、お前だけみたいだな。」 ジークリッドの作り出したという、異空間の壁は。ルーが破ったことで、崩れ掛けていたけれど…。 完全に消し去ったわけではなく、まだその効果を維持しているようで。 独特な違和感は、まだ拭えてない。 「蒼髪の守護騎士か…ならお前が、ムーバを殺したのか。」 仲間を倒した騎士と知ってか、ジークリッドは興味深げにルーを一瞥するけど。 それは決して敵討ちをするとか、怨恨といった類いではなく… 「なら、少しは楽しめそうだ…」 ラルゴと同じ。 ただ純粋に、強者へ抱く探求心でしかなかった。 「勝った奴が、神子を手に入れる…解り易くていいだろ?」 「何を…」 来いよ、と挑発するジークリッドに。 ルーも静かに怒気を滲ませて。 「お前になど、セツを渡すものか…!」 叫ぶな否や…魔族目掛け、床を蹴った。 「ルー…!」 真正面からジークリッドに突撃するルーは、一瞬で間合いを詰めていく。 そのまま勢いに乗せ、剣で薙ぎ払うものの… ジークリッドは大きな体躯とは裏腹に、俊敏な動きで難なく躱してみせた。 お互いにまた距離を保ち、ジリと隙を伺う。 「口先だけじゃあ、ないんだな。」 一手目でルーの実力を垣間見たジークリッドは、称賛を述べ口笛を鳴らす。 ルーはそれに一切反応せず、表情も崩さぬままジークリッドを凝視し続けていた。 こうして怒りを露にするルーは、 いつもの温厚な姿とはかけ離れていて。 なんだか、別人みたいだ…。 「お前が、魔族の王なのか…?」 依然、剣はジークリッドを捉えたまま。 問うルーに魔族は、さあな…と興味無さげに答える。 「魔族に人間みてぇな堅苦しいルールは、存在しないからな。王とか正直どうでもいいんだが…一番強い奴がそうだと言うなら、」 “俺が、王だ─────” ジークリッドは迷いもなく、宣言してみせるのだった。

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