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⑭
「っ…るう…!」
「退 け…!!」
「チッ…」
バンッと弾かれたように扉が開け放たれた瞬間。
部屋を追おう闇に、亀裂が走り。
「ルー…!」
まさか“小細工”とやらが破られるとは、思わなかったのか…
想定外の侵入者に、ジークリッドは一瞬面食らった表情を浮かべるものの…すぐに冷静さを取り戻した。
「俺達の術を破るとは───…いや、これも神子の力か…」
ジークリッドがぽつりと溢し、オレを見やれば。
ルーはそれを遮って立ちはだかる。
「貴様…魔族が、どうやって此処に…」
「ルー、そいつがジークだっ…!」
魔族の侵入に、眉間を険しくさせるルーファス。
オレが魔王だと告げると、目を見開き剣を構え直した。
「コイツが…」
まさかのタイミングでの、魔王 出現に。
ルーも内心、信じがたいのか…訝しげに呟く。
「…どうやら入って来れたのは、お前だけみたいだな。」
ジークリッドの作り出したという、異空間の壁は。ルーが破ったことで、崩れ掛けていたけれど…。
完全に消し去ったわけではなく、まだその効果を維持しているようで。
独特な違和感は、まだ拭えてない。
「蒼髪の守護騎士か…ならお前が、ムーバを殺したのか。」
仲間を倒した騎士と知ってか、ジークリッドは興味深げにルーを一瞥するけど。
それは決して敵討ちをするとか、怨恨といった類いではなく…
「なら、少しは楽しめそうだ…」
ラルゴと同じ。
ただ純粋に、強者へ抱く探求心でしかなかった。
「勝った奴が、神子を手に入れる…解り易くていいだろ?」
「何を…」
来いよ、と挑発するジークリッドに。
ルーも静かに怒気を滲ませて。
「お前になど、セツを渡すものか…!」
叫ぶな否や…魔族目掛け、床を蹴った。
「ルー…!」
真正面からジークリッドに突撃するルーは、一瞬で間合いを詰めていく。
そのまま勢いに乗せ、剣で薙ぎ払うものの…
ジークリッドは大きな体躯とは裏腹に、俊敏な動きで難なく躱してみせた。
お互いにまた距離を保ち、ジリと隙を伺う。
「口先だけじゃあ、ないんだな。」
一手目でルーの実力を垣間見たジークリッドは、称賛を述べ口笛を鳴らす。
ルーはそれに一切反応せず、表情も崩さぬままジークリッドを凝視し続けていた。
こうして怒りを露にするルーは、
いつもの温厚な姿とはかけ離れていて。
なんだか、別人みたいだ…。
「お前が、魔族の王なのか…?」
依然、剣はジークリッドを捉えたまま。
問うルーに魔族は、さあな…と興味無さげに答える。
「魔族に人間みてぇな堅苦しいルールは、存在しないからな。王とか正直どうでもいいんだが…一番強い奴がそうだと言うなら、」
“俺が、王だ─────”
ジークリッドは迷いもなく、宣言してみせるのだった。
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