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⑮
「…なら、お前を討てば、」
言いながら、ルーはオレを一瞥し…告げる。
「セツは…自由になれるのだなっ…!」
またも先手を打ち、剣に淡い光を宿す。
刃を包むそれは、蒼白く煙のように立ち昇り…
ルーの姿が一瞬消えたかと思えば、空 を切って高く跳躍し。
ジークリッドの頭上目掛け、放たれる。
「チッ……!」
武器を持たぬジークリッドは、自身の腕に魔力のようなものを素早く集めていくと。
あろうことか、勢い良く繰り出されたルーの剣撃を。その素手で…当然のように受け止めてしまったのだ。
瞬間、それらがガツンッと鈍い金属音を鳴らし。
剣と腕で、互い負けじと鍔迫り合う。
「さすがは守護騎士、神子の末裔と言われるだけはあるな…」
ますます神子に興味が湧いたと、わざとらしくオレを見て告げるジークリッド。
対するルーファスは、静かに激昂する。
「セツには、指一本触れさせはしない…!」
俺が護る────…
吠えたルーの背中を、オレは祈るように見守る。
この異質な空間の所為か、身体の震えが止まらない。
けどルーは、オレを守るために戦っているのだから。
何も出来ないけど、せめてルーの無事を…と。
強く神様に縋る思いで願った。
「俺が欲しいと思ったモノは、全て手に入れてきたんだ…」
魔族の天辺もそう、一度の例外も無く全て。
「神子を手にし…この俺が、歴史をも覆してやるよ。」
神子と魔族の因縁を。
ジークリッドは高らかに宣言する。
「させるものか…!!」
刹那…競り合う刃を受け止めるジークリッドが、勢い良くそれを押し返して。同時に生み出された衝撃波が、ルーを軽々と吹き飛ばす。
体勢を崩すも、すぐに立て直すルーは…止まることなく反撃に打って出た。
「遅ぇんだよ…!」
先を読むジークリッドは、自身の手を双剣のように扱い。ルーの剣を受け流す。
しばらく連撃は続き、火花を散らしたが…
「終いだな…!」
傍目からでは判らぬ、ほんの僅かな隙を突いて。
ジークリッドの手刀が一層暗い闇を纏い、煌めく。
「させぬ…!」
それでもルーは上手く身体をしならせ、ジークリッドの手刀を躱して。
反撃に、転じるのだが──────…
「ルー…ッ!!」
オレが叫んだ瞬間、
ルーとジークリッドの身体が重なり…
時が止まる。
「…………」
二人は暫し動かなかったが…
「る、う…?…」
オレは無意識に立ち上がる。
なんだか胸の奥がざわついて、落ち着かない。
「ぐッ…」
ルーの口から呻き声が漏れ、ジークリッドの腕を掴む。
掴んだ手刀の切っ先は、
ルーの胸に、食い込んで、いて…
「はッ…惜しかったな…」
笑いながら、
苦痛に顔を歪ませるジークリッドの脇腹には…
ルーの剣が、深く突き刺さっていた。
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