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「聞いて、くれ…セツ…」 そう、声を搾り出したルーファスに。 心臓が戦慄し、オレはイヤだと首を何度も振る。 「お願い…だか、ら…」 「いやだ…ききたくないッ…」 ダメだ、そんなことより早く怪我を治して… 話なら、それからでも遅くはない、のに… それでもルーは、聞いて欲しいと訴える。 「ずっと、だ…お前を…ひと目見た時から、ずっと…」 俺は魅せられてしまったのだと。 途切れ途切れ、紡がれる。 「やだッ…後でちゃんと、聞くっ…からぁッ…」 だって…これじゃまるで、 「俺は、ずっとこの瞬間をっ…夢見て…どう、か…聞いて、ほしい…」 俺は、お前を… 「愛している…」 「あああああ…ッ!!」 夢見たのはオレの方。 愛の言の葉を伝うルーファスは、とても清々しく輝いていて。 オレは込み上げる想いに、涙が止まらなくなる。 「ば、か…なん、で、言っちゃうんだよッ…!」 こうなることを恐れて、 ひたすら隠して、誤魔化して。 ルーにさえ、言わせないようにしてきたのに。 最悪だよ…これじゃ、まるで… 「護ると、約束…したの、に…」 「いいからッ…!も、喋っちゃダメだっ…」 ルーが話す度、その唇から血が流れ出し… 傷口からも真っ赤なそれが止めどなく、溢れてしまうから。 オレは無我夢中で傷口を押さえ、訴えるけれど… 今のルーは、ちっとも聞いてくれないんだ… 「セツに…逢えて、よか…っ…た…、お前の守護騎士に、なれたこと…誇りに、おも、う…」 「なッ…ずっと、一生護るって、誓っただろっ…!!」 オレが駄々を捏ねるように返すと、ルーは一瞬寂しげに笑って… 「セツ、愛して、る…」 「るうっ…!ルーッ…!!」 残酷なほどに、甘い甘い言葉を与えるルーは。 震える手を伸ばし、オレの頬に触れ… 瞳が閉じられると、 そこから、一筋の涙が零れていった。 「ルーッ…ダメだよっ、起きて…ねぇッ…!!」 オレが何度呼んでも、その瞳はもう開かなくて。 唇も僅かに開いたまま… あんなに与えてくれてた甘い言葉も何も、 もう何も…語ってはくれない。 力失く横たわる愛しい身体に、顔を埋める。 お前は、酷く冷たくて。 受け入れられないオレは… ただただ、その愛おしい人を、 強く強く抱き締めた。

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