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⑱
「セツ…」
「これは、一体…」
背中から、みんなの声がしたけれど。
オレの心は打ち拉がれ…
虚ろにただ、腕の中の愛しい人に縋り付く。
「約束したのに…ど…して…」
誓いのキスなんてしなけりゃ良かった。
ついつい自分を甘やかして…
こんなんじゃ、好きだなんて言わなくても。
もう、手遅れだったじゃないかっ…
「ダメだ、よっ…ルーじゃなきゃ…ルーが守ってくれなきゃ、オレっ…」
弱いから、ひとりじゃ生きていけないよ…?
ルーがいなきゃ、此処にいる意味も。
世界を守る理由だって。
何も、無いんだから…
「こんなの、認めないからっ…なッ…」
例えゲームの世界だろうが、
選択肢通りに結末が定められていようが…
そんなものに。
振り回されて、たまるもんか─────…
「オレだって、ずっと言いたかったんだ…」
なのに言い逃げなんて、ずるいよ…
どんなに叫んでも、ルーにこの声は届かない。
「セツ…」
そんなオレの姿を、みんなはただただ黙って見守る。
「オレだってっ…お前と一緒、でッ…」
あのゲームで知り、
この世界で出逢った時から、心奪われて。
気付いたら、いつもお前のことを目で追っていた。
初めは男だからだとか、
色々な感情が邪魔をして…
自覚すら、してなかったけどさ…
今なら解るよ?だって…
「ずっとずっと、お前のことが好きだったんだよッ…!!」
だから、お願いだ。
オレはルーを抱き、心の底から、想う。
そうだ、オレは神子なのだから。
(信じるよ…)
知識も無い、術 も知らない。
けどそんなことには囚われず、ひとつの想いだけを胸に…
願う。
この命が救えないのなら、
オレは神子である資格なんて無いだろう。
たったひとつ、
大切な者すら救えなくて。
その程度の存在が、世界を救おうだなんて…
(だから、傍にいてよ…ルー…)
じゃなきゃオレ、世界なんて救えないし。
独りきりで生きてくなんて、もう出来ないよ?
オレは甘ちゃんだからさ…
お前がちゃんと、隣でみててくれなきゃ。
ルーがいなくなってしまったら、
オレの居場所なんて…
何処にも無いじゃないか…
だから。
「…すご、い……」
誰かがぽつりと呟く。
目を閉じていても、分かる。
オレの願う通り、想いは力となり…
この手に、宿る。
あたたかいそれは、オレとルーを優しく包み込み。
それでもまだ足りないから。
ひたすらに。
心の中で、ルーのことだけを想った。
大丈夫、奇跡はこうして…
生まれるんだから。
『セツ…!!』
一気に膨れ上がる光が。
オレとルーを覆い尽くし、目映さにみんなが叫ぶ。
オレの身体から織り成す光は、帯状に伸びるとルーの身体を突き抜けて。絡まりながら、柱を成して急上昇していき…
宙へと霧散していった。
「セツ……平気、か…?」
「うん…」
オレがゆっくり振り返ると、ジーナが心配そうな顔で声を掛けてきて。
ロロやアシュ、ヴィンも…
悲痛な面持ちで、こちらへと近付く。
「セツっ…ルー、は…」
泣きながらロロが、恐る恐る問い掛けて。
オレは一度、腕の中のルーを振り返り…答える。
「大丈夫…たぶん、眠ってるだけ…だから。」
確証は無いけれど…
そう付け加え、オレはルーに視線を戻す。
先程まで熱を失っていた身体は、ほんのりと温かく…頬にも赤みが差し、生気が宿ってる。
ヴィンが傷口を確認すると、貫かれたはずのそこは生々しい傷跡を残しはするものの…ちゃんと塞がっているみたいで。
オレは安堵の涙をぽたりと一粒、その大好きな人の頬に滴らせていた。
「良かったね…セツっ…」
「うん……うんっ…」
ロロの言葉に、感情が一気に溢れ出て。
オレは噛み締めるよう…ルーをぎゅっと抱き締める。
その胸に擦り寄り、僅かに伝わる…けれど確かに脈打つ、ルーの鼓動を愛おしいと感じながら。
オレはその幸福を迎えられたことに。
心の底から、感謝した。
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