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ep. 19 此の愛を君に紡ぐ①
「セツ…少し休んだらどうだい…?」
「アシュ…ううん、平気だよ…」
ジークの襲撃から3日。
けれどルーは一向に目覚める様子は無い。
今も自室のベッドの上で、静かに眠り続けていた。
あれからオレはずっと、
ルーの傍をこうして離れず寄り添い…
みんなが様子を見に来ては、アシュのように気を遣ってくれるのだけど…
「平気って、そんな顔をして…殆ど眠っていないのだろう?」
ルーの眠るベッドの前に膝を付き、じっと動かないオレの隣にアシュが跪くと。オレの目元に触れ、痛々しげに苦笑う。
実際アシュの言う通りだったし、泣き過ぎて目も腫れぼったくなってたから…
今のオレは、相当酷い顔をしてるんだと思う。
けど今は、そんなことを気にする余裕なんて無かった。
「傷はほぼ塞がっているみたいだし…意識さえ戻れば問題ないと、医師も言っていたんだろう?」
「うん…」
それでももう3日…
身動ぎひとつ無く、ルーは眠ったままだ。
神子の治癒魔法で、一命は取り留めたかもしれない。
けどルーファスは、
あの時に一度…確かに死んでいたはず。
命を落とすほどの怪我を追いながら、生き返ったことは本当に奇跡なんだ。
だから、もしかしたらこのまま…一生眠り続けることになるのかもしれない。
もう二度と、目覚めないんじゃないかって…
そんなことばかり、考えてしまうから…
「羨ましいね…ルーファスは。」
「え…」
ルーの手を握り締め、祈るよう眠る横顔を見つめていると。アシュにそう告げられ、思わず彼を見上げる。
「だってセツに、こんなにも想われているのだからね…」
きっと届くよ…そう言ってアシュは微笑む。
「ルー、早く起きないと…僕がセツを貰っちゃうからね?」
いつもの調子でおどけるアシュだけど…
今はその優しさに、すごく救われた。
「じゃあ…邪魔者は退散するよ。」
疲れたらちゃんと言うんだよ、と…
アシュは最後にポンとオレの頭に触れて。
静かにルーの部屋から、出て行った。
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