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「ルー…」 アシュを見送り、またベッドへと視線を戻す。 眠る表情はとても穏やかに見えるけど… 静かに寝息を立てるだけで、寝返りどころかピクリとも動かないから… 目を離すのが、怖い。 僅かに呼吸で上下する胸元を確認してないと、 生きてるかさえ、不安になってくるから… 今のオレは、本音こうして… 自我を保っているのもやっとだった。 (すごく、怖かった…) それは自分が死に直面した時よりも、ずっと。 目の前で、愛しい人が魔族に貫かれ…息絶える。 そんなの、思い出すだけで震えが止まらなくなる。 なんとか神子の力も発動して、助けられたけど… この先、ルーが目覚める保障なんて何処にも無いんだから。 「いつまで寝てんだよ…」 力無いルーの手を取り、 縋るように自分の胸へと抱く。 「起こすのは、お前の役目だろ…ばか…」 反対の手を伸ばして、今度はルーの頬にも触れる。 「あんな告白…ずるいじゃんかっ…」 だったらオレにも言わせろよ… どれだけ言いたいのを我慢したと思ってんだよ。 オレだって、ずっとずっとずっと… お前のことを想ってたんだからな… 「自分だけ格好つけやがって…オレのも聞いてよっ…」 いつものように困った顔で、恥ずかしそうに笑って。もう一度言ってくれよ… そしたら今度はちゃんと、応えるから。 「大好きなんだっ…ルーファスのことが…」 頬から指を滑らせ唇に触れて。 この想いを託し、口付けをする。 すると…ルーと触れた箇所が、僅かに動いた気がして… 「セ、ツ…」 「るっ…ルー…!!」 伏せていた目を見開いた時にはもう。 オレはその愛しい人の腕の中に、 納められていた。 開き掛けた口を、ルーの唇で塞がれる。 「んっ…ふぁッ…」 「は……セ、ツ…」 唐突過ぎて、何がなんだか判らないけれど… 与えられた不意打ちのキスは、オレが夢にまでみたもので。 それは甘く甘く、いつになく熱っぽくて。 オレの心をとろとろに溶かし、 めいっぱい…満たしていく。 制約のあった口付けは、 その戒めからようやく解かれ。 想うまま、深く深く求め合う。 無我夢中、 ただ与えられる喜びに、身を委ねたのち。 ルーが最初にオレへと告げる言葉は、 「愛している…」 そう…オレが何より待ちわびた、愛言葉だった。

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