225 / 423

ふわふわと宙を漂うような感覚。 そう、これはきっと夢の中…(うつつ)との境目でオレは。 これ以上ないくらいの幸福に満たされる。 彼は笑う。 愛しげにオレを見つめ、欲しがる度にキスをくれる。 触れて、耳元で惜しげもなく愛を囁いて… その逞しい腕で、強く優しく包み込んでくれるんだ。 (もう、いいんだよね…) あんな残酷な未来に縛られることもないし、 この想いを飲み込まなくても構わないんだから。 すると夢の中の愛しい人は、応えをくれるように抱き締めてくれるから。 (大好きだよ…) これから先…ううん、まだ何も終わってないから。 ここから、なんだろうけど。 お前が隣にいてくれるなら。 オレはもう、逃げたりなんかしないよ? だから… (ずっと、傍にいてね…) 生きて、オレをずっと守って。 そうすれば、前を向いて歩けるから。 お前はオレだけの騎士。 そして唯一の────── 「ん……」 ぼやける視界を、ゆっくりと開けば… 「おはよう、セツ…」 そこには夢と同じ、大好きな顔があり… 蕩けるような微笑で、オレの髪に触れてくる。 「んぅ…ルー…?」 まだ夢が続いていると思い、 ふにゃりと笑ってルーに擦り寄る。 さっきより温かくて、 感触とかスゴくリアルだなぁ~…って… でも、あれ…? 「あっ…!」 「セツ…?」 我に返って見上げたら、ルーに苦笑いされて。 改めて、おはようと告げられる。 ニコニコ爽やかに笑うルーを、しばらくじーっと眺めていたけど… そういえば、オレとルーは昨日あんなコトやこんなコトを…したんだと。一気に記憶が甦った瞬間、オレの顔はボフンと音を立て噴火した。 「セツ…」 急に恥ずかしくなってきたオレは、布団を被って隠れるけれど。上から甘ったるい声で名を呼ばれ、心臓まで可笑しなことになってしまう。 そんな風に呼ばれてもさ… 目覚めたばっかのルーと、あんな厭らしいコトしちゃったんだと思ったら。 顔なんて、まともに見れるワケないじゃんね… 「セツ、顔を見せてくれないか…?」 「ううっ…」 オレの気持ちなど知らないルーは。 布越しに触れてきて。すぐ近くで、物欲しそうに囁いてくる。 その声は、エッチなことをシてた時のものに近くて… 抗えないから、ズルイ。

ともだちにシェアしよう!