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⑨
ふわふわと宙を漂うような感覚。
そう、これはきっと夢の中…現 との境目でオレは。
これ以上ないくらいの幸福に満たされる。
彼は笑う。
愛しげにオレを見つめ、欲しがる度にキスをくれる。
触れて、耳元で惜しげもなく愛を囁いて…
その逞しい腕で、強く優しく包み込んでくれるんだ。
(もう、いいんだよね…)
あんな残酷な未来に縛られることもないし、
この想いを飲み込まなくても構わないんだから。
すると夢の中の愛しい人は、応えをくれるように抱き締めてくれるから。
(大好きだよ…)
これから先…ううん、まだ何も終わってないから。
ここから、なんだろうけど。
お前が隣にいてくれるなら。
オレはもう、逃げたりなんかしないよ?
だから…
(ずっと、傍にいてね…)
生きて、オレをずっと守って。
そうすれば、前を向いて歩けるから。
お前はオレだけの騎士。
そして唯一の──────
「ん……」
ぼやける視界を、ゆっくりと開けば…
「おはよう、セツ…」
そこには夢と同じ、大好きな顔があり…
蕩けるような微笑で、オレの髪に触れてくる。
「んぅ…ルー…?」
まだ夢が続いていると思い、
ふにゃりと笑ってルーに擦り寄る。
さっきより温かくて、
感触とかスゴくリアルだなぁ~…って…
でも、あれ…?
「あっ…!」
「セツ…?」
我に返って見上げたら、ルーに苦笑いされて。
改めて、おはようと告げられる。
ニコニコ爽やかに笑うルーを、しばらくじーっと眺めていたけど…
そういえば、オレとルーは昨日あんなコトやこんなコトを…したんだと。一気に記憶が甦った瞬間、オレの顔はボフンと音を立て噴火した。
「セツ…」
急に恥ずかしくなってきたオレは、布団を被って隠れるけれど。上から甘ったるい声で名を呼ばれ、心臓まで可笑しなことになってしまう。
そんな風に呼ばれてもさ…
目覚めたばっかのルーと、あんな厭らしいコトしちゃったんだと思ったら。
顔なんて、まともに見れるワケないじゃんね…
「セツ、顔を見せてくれないか…?」
「ううっ…」
オレの気持ちなど知らないルーは。
布越しに触れてきて。すぐ近くで、物欲しそうに囁いてくる。
その声は、エッチなことをシてた時のものに近くて…
抗えないから、ズルイ。
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