227 / 423

ep. 20 急展開①

『…ツ……セツ……』 深い眠りの中、大好きなルーの声で意識は少しずつ浮上していく。 でも、もうちょっとだけこうしてたくて… オレは瞼を閉じたまま、ルーの胸に頭を預け。 あと5分だけ~…と、甘えるように返す。 そうすると、今度は軽く肩を揺さぶられるんだけど。駄々を捏ねるよう、ぐりぐりと額を押し付けて…ぎゅうっと抱き付いてやった。 「セツ…お願いだから…」 「んん-…やだぁ…もう少しだけぇ…」 ルーが困り果て溜め息吐いても、オレは構わず擦り寄る。どうせなら、このままもっかいイチャイチャしたいなぁ~…とか。 馬鹿なことを考えていたら───── 「ゴホンッ!」 「ぴゃいっっ…!!?」 ルー…のものではない、不自然な咳払いにハッと目を見開き。瞬時に覚醒するオレは… 慌ててルーの胸から離れ、起き上がる。 と…… 「…おはようございます、セツ?」 「ぎゃ~ッ!!って…び、ヴィンッ!?…それに、」 みんなも─────…!? そこには前述(ぜんじゅつ)のヴィンを始め…ロロ、ジーナ、アシュまでが勢揃いしており。 思わず悲鳴を上げるオレは、ベッドで隣に寝てたルーと、みんなを交互に見て… ピシリ、固まった。 「ふふ…セツの看病は、とても情熱的なのだねぇ。」 僕も是非お願いしたいなぁ~と告げるアシュは、笑いを必死で堪えるよう口を抑えて。 その台詞に、ルーはあからさま顔を引き攣らせる。 「いいなぁ~、ボクもセツと一緒にぎゅってしながら寝たいな~。」 「お前…ホント顔の割に、大胆なこと言うよな…」 ロロが指を咥え、じーっとオレを見やれば。 ジーナが真っ赤になりながらツッコミを入れる。 更には、 「え~、ボクだって男だからね?それなりに下心くらいあるよ~!」 ロロがかなり際どいことを、言い始めてしまったので…ルーの顔からは一切の笑顔が消えてしまった。 ヴィンに至っては… 「個人的な事情に口を挟むような、野暮な真似はしたくはありませんが…」 なんだか説教が始まりそうな、雰囲気だったのだけど。 「瀕死状態から目覚めたばかりの身で…負担が掛かるような行為は、お薦め出来ませんね。」 『なっ…!!?』 ついルーと反応が被ってしまったが… 何を勘違いしたのか、ヴィンは無表情で爆弾発言を投下する。 「あらら、もうそんなに愛を深めちゃったのかい?」 最近の若いコは性急だねぇ~なんて。 アシュはわざと爺臭い物言いで以て、からかってくるし。 …極め付きは年少組ふたり。 「ええ~…セツ、ルーのモノになっちゃったの…?」 「泣くなよロロ、こうなることは解ってたんだしさ…」 何やらショックを受け、わーわー騒ぎ出すロロを。ジーナが慰めたりするもんだから… オレはいたたまれず、つい声を大にして叫んだ。 「なっ、何を勘違いしてんのか知らないけどさっ…」 勢い良く立ち上がったは良いものの… すぐに口ごもる羽目になるオレ。 や…コイツらが思ってるようなコトは、断じてシてない……まだ。…が、それに近いコトは、結構やっちゃってたなと、思い出してしまったもんだから。 上手く流せばいいものを、単純なオレはつい真っ赤になって俯いてしまい。 どうしよう…焦るオレは助けを求め、チラリとルーファスに視線を送るのだが… 頼もしいかな、ルーは目配せして頷き。 満を持して口を開いた。 「私とセツは、まだ一線を越えてはいない。」 “清い仲だ────” そう、真顔で宣言され。 オレを含めた全員が言葉を失うのは、もう… 必然でしかなかった。 「るっ、ルーの…バッカやろう~~!!」

ともだちにシェアしよう!