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「セツ…まだ怒っているのか?」 ルーの所為で、あの後は散々だった。 別に…怒ってるワケじゃない。 ただ羞恥心で、まともに話せないだけで… すまないと何度も謝るルーに、オレはつい冷たい態度を取ってしまっている。 すぐに許してあげれば良かったのだけど。 顔を見ると、意識しちゃうもんだから… それでツンツンしてたら、 ジーナに「痴話喧嘩か、セツ~?」なんて…また冷やかされるからさ。 結局一日中この調子で。 夕食後にもまた、ルーが謝りに来るのだけど… 「セツ、せめて話を…」 そうしたいのは山々だけど… ルーの顔を見る度に今朝の事とか、前夜の行為を思い出してしまって。 まともに目も合わせられず、オレは俯きがちにスタスタと先を急ぐ。 そんなオレの後ろをついて来るルーは。 諦める様子もなく、何度でも謝罪を口にするのであった。 「べっ…別にもう、怒ってないから…」 足を止めず口先だけで告げても、ルーは納得してくれず。 「ならば何故、一度も私を見てくれないのだ?」 許してくれるなら、目を見てくれなどと… 人の気も知らないルーは、無茶振りを強いてくる。 「ホントだってば…」 ルーはオレが怒って避けてるんだと、勘違いしてんだけど。 こっちはただでさえルーのコト意識しまくりで。 なんていうか…こう、ルーといるとさ。つい好き好きオーラ全開になっちゃって。 そういうの、抑えられなくなっちゃうから… 正直、どう接していいか分からないんだよね…。 今までこんなに本気で誰かのことを、好きだって自覚したことが無かったから…余計にさ。 ルーは特別で。 だからこそ、気持ちが溢れ過ぎてしまうから。 自分でも感情を、コントロール出来ないんだよ… 「とりあえず、ちょっと待ってってば…」 心の準備して、後で話しを聞くからと。 オレは目の前の扉を開く。 それを逃避だと更に勘違いするルーファスは… 扉を手で抑え、オレの行く手を阻もうとするのだけど… 「だからっ、風呂…入るだけだろ…?」 「え……風呂…?」 謝るのに夢中で、オレの目的地を把握していなかったルーは。目を丸くし、扉の向こう…大浴場を認め、固まる。 そんなルーにオレは溜め息ひとつ溢しつつも。 ちょっとだけ、悪戯心が芽生えて… 「それとも…一緒に入りたいの?」 なぁんて、からかうような口調で誘ってみたり。 今朝の仕返しじゃないけどさ。 ルーの天然タラシには、散々振り回されてきたんだし。どうせこんなこと言ったら、慌てちゃうだろ? だからちょっと困らせてやろうかと、思ったんだけど… 「…………」 「え?ちょ…ルー?」 ところがどっこい、コイツときたら途端に口元押さえ考えて込んでしまい。 予想が外れたオレの方が、動揺させられる始末。 え、まさか本気で? やや…こっちは冗談のつもりだったし。 それこそ心の準備とか、まだまだなんですけど───…

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