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「………いや、やはり止めておこう。」 「へっ…?」 真剣に悩むルーの前でオロオロしてたら、そう告げられて。オレはぽかんと口を開けたまんま、目を丸くする。 「私には、下心が…あるからな。その…平常心を保てる自信が無いから。」 それはつまり、オレと一緒に風呂なんか入ったら。理性がもたずに手を出しちゃうかもよっ…てこと、だよね? 思わず想像しちゃったら、頭ん中がボフリッと沸騰して…オレの顔は、茹でダコみたく真っ赤になってしまった。 「昨日はつい、舞い上がってしまったが…セツのことは大事にしたいと思っているし。余りがっついて嫌われては、困るからな…」 だから自分は外で待っているからと。 ルーは苦笑しながら、廊下へと出て行く。 「もう…」 熱く火照る顔を押さえ、へにゃりとその場に座り込む。 さらっと言ってたけど。 すごいコト言ってたよね、あれは… (自惚れても、いいのかな…) 想いが通じ合えた自覚はある、が… なんていうか、メチャクチャ愛されてんのかなって思いたくなる。 あんな風に言われたら、余計にさ… (でもさ、) よくよく考えてみれば、こうなる前から結構グイグイ来てなかったか?アイツ…。 昨夜だって、意識が戻ってすぐにキスしてきたし。勢いのまま、最後までされちゃうんじゃないかって… かなり際どい流れだったとは、思うんだけど。 だったら、一緒に風呂くらいなら入れそうだし? オレ的には、その…男同士だけど。 一応普通にエッチなコトは、出来るワケだからさ。 ルーにだったら、何されてもいいかも…なんて。 ルーを好きになった時点で、そんくらいの覚悟はあったんだけどなぁ…。 (むしろ、抱かれたい…とかね。) いやもう流れというか、オレがソッチかな~て自覚もあるし。…てかオレがルーを抱くっていう発想が、そもそも浮かばないというか…。 男同士だから、ナニをアソコに入れちゃうって… 何気に元彼女のアリサちゃんから、無駄に詳しく教えて貰った記憶もあるし…。 …まあ、そういうワケだから。 その時は、他人事のように聞き流してたけれど。 まさか自分が男の人を好きになるだなんて、思いもしなかったから… (それでも、ルーになら…) ルーのモノになりたい。 オレにだけ触って、感じて、全部独り占めしてしまいたい。 性欲も前までは、人並み程度だったハズなのに… 今はこんなに貪欲に、欲しがったりしてる。 ここまで変われてしまうだなんて。 ホント、愛の力は偉大だなぁって思うよ。 (いつか…) その時が、来るのかな? 正直オレは、今すぐルーに求められても、全然構わないけどなぁ…。 だって触れられたいって、今すぐにでも扉の向こうのルーに。言ってしまいたいくらいだし…。 (あ-ダメダメ…ルーはまだ、怪我が治ってないんだから…) 下心全開で邪なコトを考えていたら、バカみたいに身体が火照ってきてしまうから。 オレはその雑念を振り払うべく、いそいそと風呂場へ向かった。

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