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翌日、それは予想外の展開だった。 先代神子の施した結界の弱体化、それに伴う瘴気の発生…転じて凶悪化する魔物達によって引き起こされる、被害の増加など。 そして先日の、魔族の王…ジークリッドによる神子屋敷への襲撃。 刻一刻と悪化の一途を辿る最中、 決して遠くはない災厄の時が…いよいよ現実味を帯びてくる。 「では…貴方の力は、ほぼ覚醒していると?」 「たぶん、ね…」 ジークによって、一度は命を落としていたであろうルーファス。 オレはそれを受け入れられず。 神子の力を自らの意思で呼び覚まし、なんとかルーを救うことが出来た。 これは確信というか、勘みたいなもんなんだけど。ある程度の力なら、コントロール出来るような気がするんだよね。 「さすがにルーを治したようには、いかないけど…」 自分の手を見つめながら、ヴィンに向け答える。 はっきりとしたもんじゃないが、自分の内で確かな力を感じとれるから。 「ならば結界の修復も…可能かもしれませんね。」 ふむ、と思案しながら告げるヴィン。 ロロは目を輝かせつつ、オレに抱き付いてくる。 「スゴイよ~セツ、これでみんなを助けられるね!」 「始めはどっか危なっかしくて頼りなかったから、すげえ心配だったけどなぁ~。」 やるじゃんかって、ジーナもニカッと歯を見せながら背中を押してくれた。 実感はまだないけど… そう言って貰えると、何だか自信が湧いてくる。 「…となると、僕達もいよいよ本腰を入れないとだね。」 いつになく真剣な面持ちのアシュは、問うようにヴィンを見やる。 「ええ…おそらく明日の議会で、何かしら進展が見られるかと。」 それには、オレと守護騎士も出席せよとのお達しで。事前に聞いたヴィンからの話によると、今後の身の振りが決められるのだろう…とのこと。 歴代の神子は覚醒後、増えた瘴気を抑えるために。張られた結界の修復をすべく…それらが点在する場所まで、自らが赴かねばならず。 守護騎士や特級騎士団と共に、遠征するのだそう。 だから当然、それなりの危険を伴うのだが… 「セツは必ず、私が守護してみせるから。」 「ルー…うん、ありがとう。けど無理はしないでね?身体はまだ、万全じゃないんだから…」 「ああ、善処する。」 隣にいるルーが、頼もしげに微笑んでくれるから。オレの不安はすぐに和らいでいくんだ。

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