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⑥
「では、話はこれぐらいにしましょう。明日は議会がありますので、私は一度陛下の元に参りますから。皆さんは────」
そうヴィンが切り出し…各々が腰を上げた瞬間、
「何者だ…!」
突然ルーが声を発したと同時に、ジーナも素早く反応して。手にしていた何かを解放されたテラスの方に向け、放つ。
それは一筋の銀光を作って宙を切り…
屋外へと、飛んでいったのだが…
「おっと…」
「……ラルゴ…!」
ジーナが放ったものは…手術用のメスみたく細い、小型のナイフであり…
それは思いがけぬ人物によって、いとも容易く受け止められた。
「さすがは神子専属の、守護騎士だな。」
「テメエ…なんでこんなとこに…!」
不意討ちを狙ったジーナの投擲 は、ラルゴの指先で阻止されてしまい。悔しげに舌打ちを漏らす。
オレ以外は皆、ラルゴの存在にいち早く気付いていたようで。既に武器を構え、対峙していた。
まさか間髪いれず、二度も魔族が侵入してくるだなんて…
予想外過ぎる展開に。
オレはラルゴを見据えたまま、無防備に立ち尽くしていたけれど。
そこはルーとアシュが、背中に隠すようにして立ちはだかり。隣と背後にはロロとヴィンが素早く構えていた。
「そういきり立つなよ、今は何もしやしねぇから。」
敵襲に殺気立つルー達に対し、ラルゴは丸腰だと主張するよう両手を上げて。ついでにナイフを軽く放って返す。
ジーナもそれを瞬きひとつもせず、容易に受け止める。
「なんで、魔族が…」
ジークに続き、ラルゴにまで侵入されるとは。
フェレスティナにも、神子の結界があるはずなのに。そこまで結界は弱まっているんだろうかと…思考を巡らせ、困惑する。
そんなオレの心情を察したのか…
ラルゴはこっちに視線を移し、口を開いた。
「ここの結界なら、ほぼ壊れ掛けてるぜ。」
「え…?」
「まだ一応、力は残ってるがな。故に今の俺には、お前らと真面にやり合う力は出せないんだが…」
ラルゴの思惑は判らないが、律儀に説明をし始めて。
彼の話では…ここの結界はジークが侵入した際、半壊したのだと言う。
「元々、この場所の封印は不安定だったみたいだしな。おかげで俺みたいに、魔法が不得意な奴でも簡単に入ってこれたぜ?」
それでもジークの時と同様、空間魔法に精通している仲間に手伝ってはもらったが…と。
しかも自身は制限を受け、戦う力もほぼ無いのだと…ラルゴは不敵に笑う。
その言葉を鵜呑みにするのは、危険だけど…
いくらなんでも単身で敵地に…しかも守護騎士が勢揃いしているような、この状況で。
彼が相当な実力者だったとしても、わざわざこんなリスクを侵してまで来る意味が…
果たして、あるんだろうか…?
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