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⑦
「今すぐ神子を捕って食ったりはしねぇよ。」
戦いに来たわけではないと断言するラルゴは、じっとオレを見つめてきて。
なんとなくだけど…今までの彼の行動を考えたら。
嘘は言ってないように思える。
「…ならば何をしに来たというのだ…?」
「話し合い…いや、むしろ果たし合いかな…」
ルーの質問に即答するラルゴは、含みのある笑いを浮かべ。一同警戒しつつも、目を見合せ疑心暗鬼する。
「…だから今は、と?」
冷静な声音のヴィンに、ラルゴは肯定を示し。
彼の目的が、なんとなくだが見えてきたから。
「とりあえず…話を聞こう、みんな。」
「セツ…」
視線だけで振り返るルーに。
オレは大丈夫だと頷き、一歩前へと進み出た。
「…少しでも不穏な動きをすれば、容赦はしない。」
オレが警戒を解く中、それでもみんなは武器に手を掛けたままで。ルーはラルゴに向け、警告を発す。
「ああ、構わねぇよ。さっきも言ったが…今の俺は、お前らから逃げ切ることすら厳しいからな。」
すんなり受け入れるラルゴは、言わなくてもいいことまで口を滑らせる。
「いくら壊れかけでも、魔族が結界の真っ只中に入るのは容易じゃねぇんだ。」
入ってくるために、仲間の魔法で結界の隙間から侵入したラルゴは。言われてみれば、いつもより覇気がないというか、少し疲れてるみたいに溜め息を吐く。
「ジークみたいな化物とは違うからな。アイツなら結界の中でも、ある程度は動けるだろうがよ…」
敵意がないのは解ったけど。
やはりラルゴ達の意図までは把握出来ず。
寧ろ自分達の王のことまで、普通に話してくるもんだから。どうなんだろう…罠の可能性も、無くはないけど…
「まあ、俄 には信じがたいだろうが。俺達はムーバの野郎とは違うからな。」
そこだけは強調してくるラルゴは。
自らムーバの名前を口にしておきながら、不快感を露にする。
ムーバは魔王に取り入ってたって、前にルーと話していたし。オレ達のような純粋な仲間…という関係では、ないのかもしれない。
ジークリッドの事とか、色々と複雑な部分もあるけど…このラルゴだけは、魔族の悪いイメージとは違うっていうか。ムーバに向ける不信感はきっと、この男の本心なんじゃないかなって…オレは思うんだ。
敵には変わりないし、かなり好戦的だけどね。
外見や口調は荒々しいけど、男気があって何処か憎めないというかさ…。
こうして改めて省みてみると。
魔族も人間と同じようなもので…魔族の全てが一括りに『絶対悪』とは、限らないんじゃないだろうか?
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