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「…で、“果たし合い”とは、一体どういう意味ですか?」 早速切り出すヴィンが、見定めるようラルゴを凝視すると。彼は少し呆れたような表情を浮かべつつ、大きく嘆息してみせる。 「ジークの野郎が───…神子をえらく、気に入ったみたいでな。」 言われてラルゴに意味深な視線を送られ、オレは反射的に肩を揺らしてしまい。するとルーは、オレを腕で隠すようにしてラルゴを睨み付ける。 「だから…なんだ?」 「まあ、最後まで聞けよ。」 ラルゴの言葉に、ルーは気色ばんで詰め寄るが…魔族はそれを制して続けた。 「あと…青髪のお前とやり合った時に、仕留め損なったのが…どうも気に入らないらしくてよ。」 あの時は相討ちで胸を貫かれ、倒れたルー… ジークリッドも重傷を負い、破壊された異空間の維持も出来なくなったため退却を余儀なくされて。 完全勝利に至らなかったことに対し、不満を溢しているんだと…ラルゴは言う。 「アイツは妙にプライドが高ぇからな。トドメを刺したはずの騎士も、こうして生きてやがるし…」 そこで提案があるんだが、とラルゴは不敵に笑う。 「ジークリッドとお前とで。神子を賭けて勝負しねぇか?」 「なんだと…」 その提案に、ルーだけでなく全員が表情を歪ませる。 「…そんな馬鹿げた話を、こちらが受け入れるとでも思ってるのかい?」 アシュの言う通り、おいそれと受け入れられる条件ではないと思うけど…。 それだと、ラルゴがわざわざリスクを負ってまで来る意味がないから… 「確かに馬鹿げた話だが、ジークは本気なんだよ。お前を完全に倒して、神子も手に入れるってな…」 ラルゴも呆れて考え直すよう、説得してみたらしいんだけど。ジークリッドは一貫して、考えを改めようとはしなかったそうで…。 お手上げだとばかりに。 ラルゴは肩をすくませ、おどけてみせる。 「ならばもし、その話を受け入れたとして…私が勝利したなら、どうするつもりだ?」 冷ややかに問うルーに、ラルゴはニヤリと笑い。 「そうなりゃ俺達は、二度と神子には関わらねぇし。結界に関しても一切手出しはしねぇ。」 「…それを、信じろと?」 あくまで淡々と、ルーはラルゴを訝しげに見据えており。対するラルゴもまた、笑みを殺し真顔で答える。 「ああ…後はお前達が、どう捉えるかだな。」 魔王と呼ばれる、魔族で最も強い男ジークリッド。彼ともう一度ルーファスが戦い、勝利した方が神子を手にする。 ルーが勝てば魔王自身が神子にも人間にも、今後一切手を出さないこと。 他の魔族に関しては、ジークリッド自ら圧力を掛ければ。ある程度の数を、従わせることが可能だとのことだが… これは、確証がある話でもないので… 「本当に魔族達は、魔王に従うのですか?人間に抱く怨恨は、そう易々と取り払うことなど出来ないでしょう?」 「全員従わせると、言い切れれば良いんだがな…さすがに嘘は吐けねぇよ。まあジークが本気を出せば、それなりの数を抑えられる筈だ。」 ヴィンの追及にも、ラルゴは包み隠さず真実を述べて。その目には、一切の焦りも迷いも感じられない。 「アイツは魔王として扱われんのを、嫌ってたんだがな…。それだけ神子を気に入っちまったんだろうよ。」 「…………」 正直なんで一度会っただけのジークリッドが、オレにそこまで固執するのか…理解出来ないけど。 もしかしたら、ムーバと同じ理由なんだろうか? 魔族が神子を手に入れたら、どうなるかっていう…

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