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「で…どうするよ、神子サン?」 問われてオレは頭を捻る。 あんなことがあったばかりなのに、ルーがまたアイツと戦うだなんて考えたくもないけど…。 遅かれ早かれ、避けては通れない運命ならば。 人間と魔族の全面的な戦争とかに発展するよりかは、断然リスクは低い気がする。 ただ… 「ルーはまだ、怪我が治り切ってないし。いきなり決闘とか言われても…」 「手負いなのはジークも同じだしな。もし話を受け入れるってんなら、期日はお前らで決めてくれて構わない。」 ルーにばかり負担が掛かるのだけは避けたくて、オレが答えを渋っていると。すかさずラルゴが口を開く。 「都合が悪けりゃ、そっちからも条件を出してくれても良いし。まあ、じっくり考えてくれや。」 そう告げるとラルゴは窓際に凭れ掛かり、腕を組んでプラプラと手を振った。 「さて、どうしたものかねぇ…。」 さすがのアシュも真顔になり、嘆息を漏らして。 「罠の可能性だってあるだろ?魔族なんて信用ならねぇんだし…」 「だよね…セツを賭けて、だなんて許せないし。」 ジーナとロロは、孤児院での一件があるからか… 疑心暗鬼し、かなり否定的な意見を述べる。 「…ルーは、どう思うの?」 当事者となったルーを見上げると、難しい顔を浮かべ、物思いに耽っていたが… 「私個人に向けた果たし合いならば、すぐにでも受けて立とうと思う。だが…」 セツを犠牲には出来ないと、ルーは迷いを口に瞑目する。 純粋な力比べだというならば、騎士として喜んでこの身を投じるが…。しかし、オレを巻き込むわけにはいかないからと。内での葛藤を打ち明ける。 「セツは…?」 「オレは…ルーに何かあったらって考えたら、怖くて仕方ないよ。でも…いつかは戦わなきゃいけない、相手だから…」 神子は魔族の天敵で、対立は必然。 因縁を絶てるならば、今がまさにその時なのかもしれない。 それにはルーの命運が掛かってしまうのだけど… フェレスティナを救うためには、天秤に掛けなきゃいけないから…慎重にならざるを得ない。 しかし… 「セツ、私のことなら構わないから。」 私はセツの為にあるのだからと、ルーはオレの迷いを察して告げる。 「でもっ、オレ…」 「これはセツが最も関わることですから。貴方が決めて良いと思いますよ?」 「僕もそれに異論は無いよ。神子と守護騎士は一蓮托生だから…ね?」 私は貴方の意思に従いますと、ヴィンも迷い無く告げ。アシュもまた賛同し、優しく微笑む。 「そうだぜ?何かあったら、今度こそ俺が護ってやるからな。」 「ボクだって…ずっとずっと、セツの味方だよ!」 ジーナもロロも頼もしいまでに、背中を押してくれるから。 「みんな…」 感極まって泣きそうになり… オレはもう一度、ルーを見上げると。 「ルー、オレのために…戦ってくれる?」 「ああ…それがセツの、望みとあらば。」 オレは覚悟を決め、ラルゴへと向き直る。 「その話、受けて立つよ。」 「ふ…そうこなくっちゃな。」 オレの宣戦布告に、ラルゴは不敵な笑みを湛えた。

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