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⑨
「で…どうするよ、神子サン?」
問われてオレは頭を捻る。
あんなことがあったばかりなのに、ルーがまたアイツと戦うだなんて考えたくもないけど…。
遅かれ早かれ、避けては通れない運命ならば。
人間と魔族の全面的な戦争とかに発展するよりかは、断然リスクは低い気がする。
ただ…
「ルーはまだ、怪我が治り切ってないし。いきなり決闘とか言われても…」
「手負いなのはジークも同じだしな。もし話を受け入れるってんなら、期日はお前らで決めてくれて構わない。」
ルーにばかり負担が掛かるのだけは避けたくて、オレが答えを渋っていると。すかさずラルゴが口を開く。
「都合が悪けりゃ、そっちからも条件を出してくれても良いし。まあ、じっくり考えてくれや。」
そう告げるとラルゴは窓際に凭れ掛かり、腕を組んでプラプラと手を振った。
「さて、どうしたものかねぇ…。」
さすがのアシュも真顔になり、嘆息を漏らして。
「罠の可能性だってあるだろ?魔族なんて信用ならねぇんだし…」
「だよね…セツを賭けて、だなんて許せないし。」
ジーナとロロは、孤児院での一件があるからか…
疑心暗鬼し、かなり否定的な意見を述べる。
「…ルーは、どう思うの?」
当事者となったルーを見上げると、難しい顔を浮かべ、物思いに耽っていたが…
「私個人に向けた果たし合いならば、すぐにでも受けて立とうと思う。だが…」
セツを犠牲には出来ないと、ルーは迷いを口に瞑目する。
純粋な力比べだというならば、騎士として喜んでこの身を投じるが…。しかし、オレを巻き込むわけにはいかないからと。内での葛藤を打ち明ける。
「セツは…?」
「オレは…ルーに何かあったらって考えたら、怖くて仕方ないよ。でも…いつかは戦わなきゃいけない、相手だから…」
神子は魔族の天敵で、対立は必然。
因縁を絶てるならば、今がまさにその時なのかもしれない。
それにはルーの命運が掛かってしまうのだけど…
フェレスティナを救うためには、天秤に掛けなきゃいけないから…慎重にならざるを得ない。
しかし…
「セツ、私のことなら構わないから。」
私はセツの為にあるのだからと、ルーはオレの迷いを察して告げる。
「でもっ、オレ…」
「これはセツが最も関わることですから。貴方が決めて良いと思いますよ?」
「僕もそれに異論は無いよ。神子と守護騎士は一蓮托生だから…ね?」
私は貴方の意思に従いますと、ヴィンも迷い無く告げ。アシュもまた賛同し、優しく微笑む。
「そうだぜ?何かあったら、今度こそ俺が護ってやるからな。」
「ボクだって…ずっとずっと、セツの味方だよ!」
ジーナもロロも頼もしいまでに、背中を押してくれるから。
「みんな…」
感極まって泣きそうになり…
オレはもう一度、ルーを見上げると。
「ルー、オレのために…戦ってくれる?」
「ああ…それがセツの、望みとあらば。」
オレは覚悟を決め、ラルゴへと向き直る。
「その話、受けて立つよ。」
「ふ…そうこなくっちゃな。」
オレの宣戦布告に、ラルゴは不敵な笑みを湛えた。
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