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⑪
「はあ~…なんだかスゴイことになっちゃったね。」
一息吐いてから、ロロがぽつりと漏らす。
「けどさ…こんな重大なこと、俺達だけで勝手に決めて良かったのか?」
女王様にも相談するべきだったんじゃ…と、ジーナは首を捻るも。ヴィンは眼鏡を直しながら、しれっと答える。
「陛下ならば問題ないでしょう。寧ろこういった展開が大好物…いえ、心の広いお方なので。」
「いや、めっちゃ本音出てるから…」
ツッコミには一切触れず、ヴィンは続ける。
「事後ではありますが、一応報告はせねばなりませんからね。私はこれから宮殿へ参りますので…」
そう告げるや否や、ヴィンは颯爽と出かけてしまった。
「ホントにこれで、良かったのかな…」
自分で決めたことだけど。
やっぱり不安は拭い切れないから…オレはつい、弱音を吐き出して俯く。
「セツ…」
するとルーが徐にオレの前で跪き、手を取ってきて…
「セツの為、世の為とあらば…私に課せられた責の重みは極めて肝要だろう。だが、私は必ず…お前を救ってみせるから。」
どうか私に護らせて欲しい─────…
ルーは敢えて騎士として振る舞い、神子のオレに許しを請う。
「うん…ルーに、オレの全てを託すよ。」
「…ありがたき幸せ。」
オレが告げると、ルーは微笑んで。
手の甲に、誓いのキスを捧げた。
「…となると、決戦に向けて更に高みを目指さなきゃだな~!」
備えあれば憂いなしと、ジーナは意気込んで拳を打ち鳴らす。
「そうか、ならば私も…」
ルーもそれに習って立ち上がろうとするけど。
オレは腕をぐいと掴み、阻止する。
「ダメだよ!ルーはまだ怪我が治ってないだろ!」
目覚めた途端、今も当たり前のようにしてるけど。
命を落とすほどの怪我は、神子の力を以てしても完全に治し切れるものではなくて。
お医者さんが言うには、内臓とか身体の中の損傷がまだ随分残ってるらしいから…本来なら安静にしてなきゃダメだってのに。
オレが心配してもルーは決まって『少しでもセツの傍にいたいんだ』…とか、言うからさ。
困るよね…こういう時は妙に頑なだし。
「私ならば、もう心配いらない。」
「ダメだってば。すぐ無茶すんだから…」
しかし…とそれでも食い下がるルー。
だからといって、オレとて譲る気など微塵も無く。
「ふーん…じゃあ言うこと聞かないなら、オレ…ルーとは絶好するから。」
「えっ…」
ピシャリと宣告すれば、ルーは氷のように固まってしまい。
「これはセツに、一本取られてしまったねぇ。」
アシュは盛大に吹き出して、ルーの肩をポンポンと叩く。
「いざとなったら、オレが代わりに魔王と戦ってやっから~!」
「ジーナ待って~、ボクも行く~!」
じゃあね~と年少組はドタバタしながら。
あっという間に外へと駆け出して行った。
「私にはセツとこの国を護るという、責務が…」
「怪我してたら、勝てるもんも勝てなくなるだろ!」
だからホラ、と告げてオレはルーの腕を引っ張る。
「ど、何処へ行くんだセツ…」
「ルーの部屋だよ。もう一度、治癒魔法を掛けてみるから。」
そう答え、ルーを引き摺って行こうとしたら…
「ふたりとも、くれぐれも怪我に障るようなコトは、しないようにね~?」
ニコニコと、アシュに見送られ。
オレは思わずルーと顔を見合せ…赤面する。
「ちがっ…そんなんじゃないから!」
「ふふ…セツがそうでも、部屋にふたりきりという状況で。果たしてルーの方が…耐えられるのかなぁ?」
「っ…」
アシュに指摘され、何故か目を泳がせるルーに。
オレは更に耳まで真っ赤に染めて…
「だっ…ダメだからなっ!怪我が治るまで、そういうコトすんのっ…」
「え…?」
「アハハッ…もうセツったら、最高…!」
テンパるオレはオレで、壮大な失言をカマし…
案の定アシュは、腹を抱え大爆笑するのであった。
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