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⑫
「ほら、座って?」
「うむ…」
やっぱりルーは、ジーナ達と鍛練したそうにしていたけれど。オレは心を鬼にし、強制的にルーを部屋へと連行した。
ジークとの一騎討ちは、ルーにとって負けるわけにはいかない一戦で。世界の命運が懸かってるのもそうだけど…
きっとルーは、オレのことを心配してくれてるから。時間も限られてるし、焦りを感じてるのかもしれない。
その気持ちはすっごく解るし、嬉しいよ?
それでも…
「セツもまだ、魔力が回復し切れていないのだろう?私なら大丈夫だから…」
「…嘘つくなよ。」
遠慮するルーを睨み付け、オレはコイツの胸の辺りをトンッと強めに小突いてやる。
するとほんの僅かだけど、反応を示したルーファス。
「じゃあ服、脱いで。」
「えっ…」
唐突だからか、ルーは動揺してみせるけども。
構わずルーの上着に手を伸ばして。無理矢理に脱がせようとしたら…
「せ、セツ…これはっ…」
「…ばっばか、違うってば…」
さっきのアシュの台詞を意識したのか、ルーはなんだか勘違いをしてるみたいで。
真っ赤な顔して慌ててるけど。
もう面倒臭いので…勢いのまま、ルーの胸元をはだけさせる。
「痕、まだ結構残ってるな…」
逞しい上半身が露になると。
その胸元には、あの夜の悪夢を蘇らせる…痛々しい傷痕。
オレはまるで自分が怪我してるかのように。
顔をしかめながらも、その傷に触れ…指の腹でそっとなぞった。
「セツ…」
「まだ、痛むんだろ…?」
オレが泣きそうな顔をすれば。
ルーも複雑な表情を浮かべ、抱き寄せるよう触れてくる。
ジークに貫かれたそれは致命傷で。
深くルーの身体を抉り…あの時ルーはたぶん、一度命を落としていたんだと思う。
神子の力で奇跡的に生きながらえたものの…。
損傷は激しく、表面上は塞がってはいても。身体の内部まではまだ治癒しきれてないらしくて。
それはオレの神子としての力が、足りなかったから…
「私はセツに、救われたのだから…」
そんな顔をしないでくれと、ルーは頬に触れ苦笑う。
「オレ、あの時…ホントに怖かったんだ…」
ルーが、大好きな人が。
目の前で無惨にも殺されていく瞬間を。
今はこうして生きてくれてるけど…
あんなことは、もう二度と起きて欲しくないから…。
「お願いだから、無理しないで?少しずつでもルーのこと、ちゃんと治すから…」
これ以上は傷付いて欲しくないと、小刻みに震える手で傷痕に触れれば。
「解った…ならば、お願い出来るか?」
「うん。」
応えてルーはオレの手に、自らのそれを重ねた。
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