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「ほら、座って?」 「うむ…」 やっぱりルーは、ジーナ達と鍛練したそうにしていたけれど。オレは心を鬼にし、強制的にルーを部屋へと連行した。 ジークとの一騎討ちは、ルーにとって負けるわけにはいかない一戦で。世界の命運が懸かってるのもそうだけど… きっとルーは、オレのことを心配してくれてるから。時間も限られてるし、焦りを感じてるのかもしれない。 その気持ちはすっごく解るし、嬉しいよ? それでも… 「セツもまだ、魔力が回復し切れていないのだろう?私なら大丈夫だから…」 「…嘘つくなよ。」 遠慮するルーを睨み付け、オレはコイツの胸の辺りをトンッと強めに小突いてやる。 するとほんの僅かだけど、反応を示したルーファス。 「じゃあ服、脱いで。」 「えっ…」 唐突だからか、ルーは動揺してみせるけども。 構わずルーの上着に手を伸ばして。無理矢理に脱がせようとしたら… 「せ、セツ…これはっ…」 「…ばっばか、違うってば…」 さっきのアシュの台詞を意識したのか、ルーはなんだか勘違いをしてるみたいで。 真っ赤な顔して慌ててるけど。 もう面倒臭いので…勢いのまま、ルーの胸元をはだけさせる。 「痕、まだ結構残ってるな…」 逞しい上半身が露になると。 その胸元には、あの夜の悪夢を蘇らせる…痛々しい傷痕。 オレはまるで自分が怪我してるかのように。 顔をしかめながらも、その傷に触れ…指の腹でそっとなぞった。 「セツ…」 「まだ、痛むんだろ…?」 オレが泣きそうな顔をすれば。 ルーも複雑な表情を浮かべ、抱き寄せるよう触れてくる。 ジークに貫かれたそれは致命傷で。 深くルーの身体を抉り…あの時ルーはたぶん、一度命を落としていたんだと思う。 神子の力で奇跡的に生きながらえたものの…。 損傷は激しく、表面上は塞がってはいても。身体の内部まではまだ治癒しきれてないらしくて。 それはオレの神子としての力が、足りなかったから… 「私はセツに、救われたのだから…」 そんな顔をしないでくれと、ルーは頬に触れ苦笑う。 「オレ、あの時…ホントに怖かったんだ…」 ルーが、大好きな人が。 目の前で無惨にも殺されていく瞬間を。 今はこうして生きてくれてるけど… あんなことは、もう二度と起きて欲しくないから…。 「お願いだから、無理しないで?少しずつでもルーのこと、ちゃんと治すから…」 これ以上は傷付いて欲しくないと、小刻みに震える手で傷痕に触れれば。 「解った…ならば、お願い出来るか?」 「うん。」 応えてルーはオレの手に、自らのそれを重ねた。

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