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「じゃあ、いくよ…」 ルーをベッドの端に座らせ、オレはその前に立ち傷痕に向け手を当てる。 呪文なんて必要ないから、オレは目を閉じ…ただ集中するのみ。 (最初は魔法を使うって感覚が、いまいち解らなかったけど…) ルーを蘇らせてから、なんとなく理解出来た気がする。 所詮オレは、魔法と無縁な世界から来た異界の住人で。難しいことは解らないし、きっと正解なんて誰も知らないのだろうけど… (けど、オレは知ってる…) 守りたいもの、癒したい者のため…祈る。 強く強く、想いを込めて。 たったそれだけで…応えはちゃんと導き出せるから。 「どう…?」 ふう…と一呼吸置いてから、目を開く。 今までずっとオレを見上げていたっぽいルーは、笑顔で答えて。 「ん…随分と身体が楽になったな…」 自身の体を省みて、静かに感嘆を表した。 胸元に残った傷痕も、心なしか薄まった気がする。 「そっか、良かっ、たぁ…」 くしゃりと笑みを溢した瞬間、目眩がして。 ふらついてしまうオレを、咄嗟にルーが抱き寄せ受け止める。 「大丈夫か…?」 「うん、へーき。ちょっと目眩がしただけだよ?」 笑って誤魔化しても、ルーはすぐに察して溜め息を溢し。 「やはりまだ、魔力が戻りきっていないのだろう?」 「えっと…」 元々はティコを救った時からだけど。 無理に神子の力を使ってしまった反動で、本来のようには魔法が使えなくなってて。 それからも、魔族の双子にやられた時とか…それこそルーを生き返らせるために。蘇生魔法だとか、無意識に実力以上の魔法を酷使してしまったのが要因で。 自分でも…魔力が不安定なんだってのは、なんとなく感じてはいた。 そもそもオレの場合は、みんなが使ってる魔法とは根本から違うみたいだから。その魔力量や、身体への負担は段違いだろうって…ヴィンが話してたんだけど。 それに… 「(うな)されて、良く…眠れていないのだろう?」 「…やっぱり気付いてたんだ…」 ああ…と頷くルーは、オレの身体を少しだけ強く抱き締める。 特にルーが貫かれた時の光景は、今でも目に焼き付いていて。 ティコの事や…魔族やグリモアに襲われた時のことも然り。それらは悪夢となってオレを蝕み、まともに眠れぬ夜を過ごすことも度々あったんだけれど。 もしかしたら、そのことにも気付いてるのかもなぁ。なんとなく、オレを抱き締める手が震えてるような気がするし…。

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