241 / 423
⑮
「では……」
遠慮なく…とばかりに、ルーファスはオレの頬を包み込み、近づく。
「んっ……」
最初は軽く触れるだけ。柔らかな感触に、オレは無意識にギュッと目を閉じるけど。
僅かに唇を開いた途端、ルーの舌がそろりと咥内へと這わされた。
このキスはあくまで治療の一環なのに。
ルーにされてる行為だと意識すればするほど、ときめかずにはいられないワケで…
「んふっ…ぁ……」
息継ぐそれもつい甘く、意図せずして熱が込もってしまう。
それでも、いつもと違うのは…
口内を抜け、何かがソコから流れ込んで来るのに気付いたから…
それがルーの魔力なのは、すぐに理解出来た。
(ああ、今なら分かるかも…)
甘くとろけるキスの中、確かに感じるルーの魔力の波動。それは緩やかに唇から伝わり…オレへと注がれていく。
こんなふうに、魔力を感じ取れるようになれたのも。神子としての力が備わってきた証なのかもしれない。
(なんだか、あったかい…)
まるで…ルーそのものを体現するかのような。
与えられる糧は優しく、オレを満たしてくれる。
「はぁ……」
「平気か…?」
離れていくルーの顔を眺め、こくんと頷く。
「なん、かヘンだ…ルーが中に入ってくみたいで…」
大して激しいキスでもなかったのに。
思考は溶かされ、恥ずかしくなる。身体はふわふわして、気持ち軽くなった気がするけど…
と、ぼんやりした頭をもたげ見つめていたら。
ルーは何故だか切羽詰まったよう、自身の目元を遮ってしまった。
「その顔は、反則だ…」
「ふぇ…?」
みるみる赤くなるルーにはてな?と、首を傾げたら。更に首筋まで真っ赤に染めて。
「セツ…お願いだから、私がいないところでは絶対に、魔力切れを起こさないでくれよ…」
「え…と、うん…?」
お前のその表情は、誰にも見せられないからと。
ルーに念押しされるけど。
そんなヒドイ顔してたのかなぁ…?
いまいち理解出来なかったけど…あまりにルーが必死だったので。曖昧ながらも、とりあえずは頷いておく。
「そんな顔を見せられたら…理性が保てなくなりそうだからな…」
「え……」
一瞬だけ垣間見せる、獣染みた瞳が。
オレを捕らえ、ついドキドキしてしまうけれど。
「いや、セツには負担を掛けたくないし…心配もさせたくはないから…」
だから我慢するんだと、悪戯っぽく告げ…チュッと軽いキスを与えてくるルー。
そう思うなら誘惑しないでよ…
お前はムダにカッコ良くて、色気もハンパないんだからさ。オレなんてチョロいから…すぐにコロッとやられちゃうんだぞ?
なんなら今のキスだけで、結構その気にさせられちゃってんのに…
ともだちにシェアしよう!