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「別に、我慢しなくても…」 「ん…?」 なんでもない!と返し、すとんとルーの肩に顔を埋める。そしたら首筋に触れられて。 そういえば、と…その手は徐に、襟の中へと差し込まれる。 「ひゃっ…な、に…」 我慢するとか言ったクセに…いきなり首筋を触られて。 擽ったさ以上の刺激に、ビクンと身体を跳ねさせていると…耳元に、カチャリと僅かな金属音が届けられた。 「ずっと、気になっていたんだ…」 告げてオレの襟元から、引っ張り出されたのは…指輪が通してあるネックレスであり。 ルーはそれを二本指で挟み、オレの目の前へと掲げる。 「あっ…」 なんだ、と…早とちりだと気付かされ、思わず恥ずかしさが汲み上げてくるオレに。 ルーはその指輪を懐かしむよう、うっとりと眺める。 「皆にからかわれた後、すぐ外してしまったから。残念だなとは、思っていたんだが…」 こうして身に付けていてくれたのだなと。 ルーは顔を綻ばせながら、指輪にも口付けを落とす。 わぁ…なんて気障なことをっ… なまじ似合っちゃうから、心臓への負荷がヤバいんですけど。 「ご、ごめん…せっかくルーがくれたのに、嵌められなくて…」 オレは嫌でも目立つから、こっそり首に掛けてたワケだけど…。申し訳なく思ってたら…ルーは首を横に振り、告げる。 「そんなことはない。セツはこうして、常に身に付けていてくれたのだから。」 贈って良かったと、ルーは目を細め微笑んだ。 「オレだって、すごく嬉しかったよ…ルーがオレのために、プレゼントしてくれた物だから…」 本当は堂々と指に嵌めたかった。 けれどまだ、その勇気がなくて…。 それでもいつか必ず、この指輪をちゃんと嵌めて。誓える時が来たなら… 「もし、その時が来たら…もう一度、ルーが嵌めてくれる?」 本当の意味を込めて、指に。 あの時はまだ、好きだって言えなかったから。 今度はちゃんと。 じっとルーを見つめ、懇願すれば。 すぐに嬉しそうに微笑まれて。 「必ず…約束しよう。」 そうして誓いのキスで以て、ルーファスは応えてくれたんだ。

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