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ep. 21 忠犬はご主人様を離したくない①

「じゃあ、行って来るから。ルーはちゃんと安静にしてるんだぞ?」 「む……」 翌日の午前中から早々と支度を済ませ、宮殿へと向かうことになったのだけど…。 ルーだけは、留守番させることにしたんだが。 勿論ルーが黙って従う気がなく。出発ギリギリまで一緒に行くんだと、言い張ってて… 「だめ。あれだけ休めって言ったのに…こっそり修練場に行ってたじゃん。」 「それはっ…」 心配するオレの目を盗んで、約束を破るからさ…。 オレが頬を膨らませていると、ルーは目を泳がせ口ごもった。 「まあまあ、ルーもセツを思ってのことだだし…ね?」 「なら尚更ダメだろ?こういうことは甘やかすと、すぐ付け上がるんだから。」 アシュが助け船を出しても、ピシャリと切り捨てる。 どれだけオレが心配してると思ってんだか… ルーに知らしめるためなら、このくらい厳しくしなきゃ…コイツは全っ然、自覚してくんないんだから。 「こりゃ…諦めるしかねーな、ルー!」 「セツのことはボクらに任せて!ルーはちゃんと休まなきゃだよ~?」 ジーナは笑い飛ばしながら、ルーの背をバシバシ叩き。ロロは慰めて頭をよしよし撫で始める。 ルーはなんとも言えない表情で、じとりとオレを見てくるので…。 「とっ…とにかく、ルーは寝てなきゃダメなんだから。いーな?」 ここは情け無用とばかりに念押しすれば、ルーは渋々ながらも頷いて。 「わかった…」 そう小さく告げ、オレ達を静かに見送った。 なんというか、捨て犬みたいで可哀想だったけども…敢えて見ないようにし、オレ達は宮殿へと向かうのだった。 「ごめんなさいアリシア様、勝手に決めてしまって…」 「セツ殿…お気になさらずとも良いのですよ?」 なんだか色んなことが目まぐるしくて。 こうして女王様に会うのも、久しぶりな気がしてならないけども。 事前に経緯を、ヴィンから伝えられていたアリシア様は。頭を下げるオレに対し、慈しみで以て微笑んだ。 「寧ろ(わたくし)から、改めて謝罪させて頂きますわ。セツ殿が大変な時分に我々は何のお役にも立てず、危険にまで晒してしまい…面目ありません。」 グリモアの謀反や、神子屋敷への魔王襲撃など…これらは国の失態だと、アリシア様は嘆く。 「そんな…アリシア様も、神殿や騎士団の人達も。みんなオレのために尽くして下さってますから…」 謝らないで下さいと告げると、アリシア様は自嘲気味に笑う。 「それなのに、唐突だったとはいえ…相談もしないで魔王との決闘を、受け入れてしまいました…。」 本来ならば、非難されてもおかしくないだろうに。アリシア様も、議会に列席するオリバーさんやトリント様も皆。優しく見守ってくれているから… 人のあたたかさに、じんわり胸が熱くなる。

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