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②
「いえ、魔族との衝突は避けられぬが運命。遠からず、来るべき戦いとあらば…此を好機と捉え、万全を期して挑むが最善と言えましょう。」
オレ達がラルゴと交わした約束は、こうして意外にもすんなりと受け入れられ。議会は決戦に向けての作戦会議を中心に進む。
そんな中、オレは意を決し…女王様に、ひとつの提案を持ち掛ける。
「あのっ、アリシア様…」
「なんでしょう、セツ殿?」
自らこんな注目される場で切り出すには、スゴく勇気が要るのだけど。
それでもオレは、おずおずと申し出る。
「この国の…フェレスティナの結界が壊れかけてるって、ラルゴ…魔族が言ってたんですけど…」
元から不安定だった先代神子の結界が、ジークが無理矢理に抉じ開けてしまったことにより破損したことは、ラルゴが言っていたことだけど。
本来は魔族や魔物の侵入を遮断出来る、完璧なものだと誰もが過信していて。
結果、魔王を容易に招き入れてしまうこととなり…神子のオレの身は危険に晒され。助けにきたルーは、危うく命を落としかけた。
「あの襲撃以降、城下付近でも魔物が現れるようになったって…オリバーさんも、さっき報告されてましたよね?」
それについては議会が始まってすぐに、オリバーさんが話していた内容だったんだけど。
オレが確認して見やると、彼もはいと返事し補足する。
「魔王襲撃に伴い警備を事前に強化していた為、事なきを得ましたが…予断を許さぬ状況は変わらず、早急な対策が必要かと。」
それを踏まえ、オレはもう一度アリシア様に向き直る。
「この問題を先延ばしにしていたら、またいつ後手に回されるか判らないし…そうなったらもう、次は無いかもしれません。」
ラルゴは決戦の日まで一切手出しはしないと、約束はしてくれたけれど。
魔族全てが、ジークに従っているわけじゃないし…そもそも魔族には、国や秩序もほぼ存在しないと言っていたから…油断は禁物だ。
騎士さんだって人間だから、いくら警備を強化しても限界があるだろうし…。
頼りの騎士団が潰されたりしたら、人々の不安は増して…事態はそれこそ、悪い方にしか転ばないから。
「結界は…神子でしか直せないんですよね?なら、」
オレにやらせて下さいと、初めて神子としての責務を果たしたいのだと…自ら進言する。
誰にも相談すらしてなかったから、ロロ達も一様に驚いていたが…
「ちゃんとやれるかは、やってみないと判らないんですけど…オレに出来ることがあるなら、試してみたいんです。」
お願いしますと、立ち上がり頭を下げると…。
アリシア様も席を立ち、歩み寄ってオレの手をやんわりと取った。
「セツ殿、感謝致します。我々を…フェレスティナの民のことを想って下さり…」
感謝を述べるアリシア様は、目を潤ませ微笑んで。
「期待させておいて…自信は全く無いんですけど…」
みんなから羨望の眼差しを浴び、萎縮してしまうオレを。アリシア様は首を振って否定して。
「その心根に、私 は何より心打たれましたわ。やはりセツ殿は、神子の名に相応しいお方ですわね!」
アリシア様の言葉にジーナが大袈裟な拍手をして。すぐに満場が一致し、賛同して続く。
「少し見ない間に、セツ殿も強く気高くなられましたし…」
(きっと愛の力、ですわね……セツ殿?)
「え…!?」
最後の台詞は小声で囁かれ。思わずアリシア様を見やると…意味深なウインクで以て返される。
オレはハッとしてヴィンに視線を送ったら、しれっと目線を外され咳払いし始めるから。
アイツめ…
また何か余計なことまで、報告しやがったな…
「私は生涯、セツ殿の味方ですから!」
祝福致しますわ~とか…こんな公な場で、女王様が意味深な発言とか、ホントやめて欲しい。
ほら、オリバーさんとかメチャクチャ難しい顔しちゃってるし…他の文官や騎士さん達もワケわかんないって、みんな首傾げちゃってるじゃんか~…
(ちょ…アリシア様っ、る…ルーのことは…)
「ご安心下さいな。今は私の胸の内だけに、留めておきますから!」
心置きなく愛を育んで下さいまし~…って、
だからそういうことを大声で言わないで下さい…。
元彼女のアリサちゃんに、瓜二つな女王様は。
中身もまんまに…いつになく生き生きとした満面の笑顔で以て。
本日の議会は滞りなく?終了していった。
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