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⑥
昨日の議会で報告した、魔王ジークリッドとの直接対決について…改めてヴィンから伝えられたこと。
まずジークリッドが神子を賭けての一騎打ちに、ルーを指名したこと。
決戦の地は、フェレスティナの東側に位置する聖域のひとつであり。そこはかつて魔族の頂点に君臨した者が初めて“魔王”として呼ばれ、国を立ち上げたとされる場所…魔王城跡と呼ばれている。
跡地とは云えど、城は今もなお残されており。
周囲は断崖絶壁と深い森に囲まれ、天然の城塞と化しているそうで。
此処から最寄りの港街まで馬車で数日、そこから徒歩で森を2日程進めば、聖域を管理するための基地が存在するらしく…
更に1日程度歩けば、漸く魔王城跡に到着するという具合だ。
神子の結界も魔王城の内部にあるそうだから。
可能であれば、その修復も試みたいところだけど。
まずは打倒ジークリッド!…を、最優先にすべきだろうとのことだった。
魔王との決戦は、ラルゴと約束した日からちょうど1ヶ月後だから。詳細は追々決めていくということで。
まずはオレが自ら提案した、フェレスティナの結界修復に挑戦するわけだが…。
これは儀式と銘打ち、神殿にて大々的に執り行われる運びとなり…若干、プレッシャーが増すこととなる。
神子にとっては、初の儀式となるわけだから…
民衆に対する不安解消の目的が、そこにはあるんだろうけれど。
オレは生粋の一般人で、ヘタレな性格を自覚しているから…些か負担は否めないというか。
それでも、自分から言い出したことなので。
全力で挑むつもりではあったけれど…。
…で、肝心の儀式なのだが。決戦も控えているから、早急にとのことで。
議会から2日後、トントン拍子で日程が組み込まれ。よってヴィンや宮殿、神殿の関係者達は慌ただしくも準備に奔走することとなる。
オレは儀式に備え休養するよう言い渡され、ルーも同様に引き続き療養に努めて。
ジーナ達、守護騎士3人は稽古に励んだりと。少しずつ、これから迎える局面を見据えており…
現状を目の当たりに、もう後戻りは許されないのだなと。緊迫する中、オレも潔く覚悟を決めた。
「ふぅ…随分良くなってきたかな?」
議会があった日の翌夜、オレはルーを部屋に招き入れて。傷が残る身体にまた、治癒魔法を施す。
目を開け深く一息吐くと、オレはルーの顔を覗き込んだ。
「医師にも一応診て貰ったが、内臓の損傷もほぼ完治したそうだ。」
セツのおかげだと感謝を述べるルーに、オレは胸を撫で下ろす。
「ならもう、普段通りにして平気なのか?」
「ああ。鍛練も少しずつ再開しても良いとのことだから。」
お医者さんの許可が下りたなら、心配要らないだろうし。…ということで、オレからも改めて鍛練の解禁を宣言してあげたら。
「魔王打倒の大役を担う私が、遅れを取るわけにはいかないからな…」
拳を握り締めながら、ルーは満面の笑みで返す。
ルーは人一倍、責任感が強いからなぁ…。
焦りもあったんだろう、ひしひしと嬉しさが伝わってきた。
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