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②
下着とローブのみを身に付け、次はいよいよ儀礼用の衣装へと着替えるのだが。
「セツ様は肌がとても白く、お綺麗ですね!」
「そ、そうかな…?」
「はい!黒髪も柔く艶やかで…羨ましい限りですわ~!」
衣装だけでなく、儀式に合わせ化粧も施すそうで。その役を担うのは、神子の屋敷でお世話になっているメイドさん達。…そう、アリシア様の息が掛かった彼女達である。
なんだかデジャブなこの現状は勿論、気の所為なんかじゃない。
「腰も細く…此度の衣装も、きっと映えますわね~。」
「あー…だといいんだけど…」
どのみち逃げ道は無いのだ。
なので潔く腹を括り、メイドさん達にキャッキャッと人形の如く着替えさせられると…
『セツ様……素敵ですわ~!!』
メイドさん達が一斉にそう告げるので。
恐る恐る鏡を見てみると…
「わぁ…」
なんだろう…男らしい、とは言えないけれど。
決して女性物でもなく、中性的というか…けど如何にも聡明な術師みたいなイメージで、それっぽく見えるというか。
化粧もしてるからかな、意外と悪くないかも…
なんだかオレじゃないみたいだ。
「セツ。」
食い入るように鏡を見ていたら、名を呼ばれて。
弾かれ振り返ると…
『あ……』
互いの姿に、つい魅とれてしまう。
(どうしよう…)
目の前に現れたのはルーファスで。
今は儀礼用の騎士服を纏い、目前で優雅に佇む。
白地に金糸の刺繍が施された衣装は、ルーの整った顔に映えキラキラと輝いて見えて。
長めの蒼髪はサイドから後ろで結われ…そこから覗く耳飾りは、何気に神子のオレが着けてるそれとお揃いみたいだった。
何より…
「ルー、カッコいい…王子様みたいだ…」
オレはうっとりと、着飾ったルーの姿にぽつりと本音を漏らし。
「それを言うなら、セツこそ綺麗だ…」
まるで女神のように。
ゆっくりと近寄り、髪に軽く触れるルーは。
まるで太陽でも見るかのよう…目を細める。
「化粧とか、やっぱ慣れなくて…」
ヘンじゃないかなっ…?オレ男だし。
顔にペタペタ塗りたくられるのだって違和感あるというか…。恥ずかしくなって俯いたら。
「もっと良く見せてくれ、セツ…」
甘い声でねだられ、指で顎を掬われちゃうから。
オレの心臓は緊張とはまた違った意味で、更に熱を上げるのだった。
あ~…もっかい禊したい…
このままだと、オレの心臓が持たないよ…。
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