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「み、みんなも準備出来たかなっ…?」 「ああ。まもなく儀式を行うそうだ。」 いよいよかってなったら、また緊張感が振り返して。オレは静めようと深呼吸を繰り返す。 そんなオレを認めるルーファスは、化粧を気にしながらも…遠慮がちにそっと、頬へと触れてきた。 「セツならば、大丈夫だ。」 「……うんっ…」 励ましてくれるルーを一度仰ぎ見て、オレはもう一呼吸置き…意を決して口を開く。 「あのね、ルー…」 「ん?」 恥じらいながら、なかなか言い出せず…しどろもどろになるものの。 「ルーにっ、お願いが…あるんだけど…」 「…なんだ?」 ようやく告げ、オレは手に握り締めていた物をおずおずと差し出す。 「コレを…オレに、嵌めて欲しいんだ…」 それは…以前ルーがオレに贈ってくれた指輪。 「本当はスゴく不安なんだ、失敗したらどうしようって…」 自らが言い出しっぺだけど。 儀式が予想外にも大掛かりになっちゃった分、プレッシャーがとにかくハンパなくて…今にも押し潰されそうになる。けど、 「この指輪を御守りにしたくて、さ…」 そうすればルーが一緒だからって、頑張れる気がするから。じっとルーを見上げ、懇願すれば。 ルーはふわりと笑って、 「……喜んで。」 応えて指輪を受け取ってくれた。 「セツ、右手を。」 言われてルーが手を差し出し、ドキドキしながら自らのを重ねる。 「今度こそは、この手に意味があると…」 それは愛する者への想いの証であるのだと。 ルーは宣言し、右手の薬指へと指輪を嵌めていく。 「神子セツに、女神の加護があらんことを。」 そう祝福し、指輪へ口付けを落とした。 「へへ…ありがと。」 改めて、自身の右手に嵌められた指輪を眺める。 最初に嵌めてもらった時は、ルーも意識してたわけじゃないし。お互いに好きだとも言えなかったから… なんだか、擽ったいや。 「セツ様、ご準備が整いましたら聖堂の方へ…」 「あっ…はい!」 神官に声を掛けられ、慌てて緩んだ顔を正す。 「神子セツ…この私に、祭壇までの護衛を任せて頂けますか?」 緊張するオレに、ルーは優雅に一礼し願い出る。 勿論オレは、くしゃりと笑って。 「…喜んで。」 愛おしいその手に、キラリと輝く右手を差し出した。

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