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「セツ…すっごくキレイ…」 儀式を執り行う聖堂に向かう途中で、みんなとも合流し。開口一番、いつになく静かなロロは…感嘆しながら頬を朱に染める。 「へぇ…意外と様になってんじゃん。」 「えへへ……ジーナもロロも、今日は随分と大人っぽくてカッコいいな!」 珍しく誉めてくれたジーナも、耳が真っ赤になっていて。年少組もルーとお揃いの正装で着飾り、腰に帯剣してるからか…騎士然とした佇まいでいて男らしくみえる。 「セツ、ルーには申し訳ないけど…此方の手は僕にエスコートさせてもらっても?」 言ってオレの左側に立つのはアシュで。 ルーと挟まれる形となる。 「俺とロロは後ろに着くから。裾長いし、気を付けろよ。」 「うん、解った。」 儀式用の衣装はドレスみたいに長いから。 慣れないオレが本番で転倒しないよう、ルーとアシュでリードしてくれるらしい。 一応演出する意味合いも、兼ねてるらしいけどね。 こうしてみると周りにイケメン守護騎士を侍らせる、ハーレムな神子…って感じがして恥ずかしいのだが。 大事な儀式の最中にズッコケたくもないので、大人しく受け入れることにした。 「私は先に、聖堂へ向かいますので。」 先行して一度振り返るヴィンは、胸元に手を当てて。 「貴方の努力は、私が誰より理解していますから。」 「ヴィン…」 そう告げると小さく微笑んで。颯爽と聖堂へと向かった。 「我々も、参ろうか。」 「うんっ…」 ルーとアシュに導かれ、ゆっくりと廊下を行く。 「神子様のご入堂にございます──────」 重々しく扉が開かれ、先に祭壇が目に留まり。 ここから真っ直ぐその場所まで、紅色の絨毯が敷かれ… 挟むようずらりと並ぶのは、オリバーさんを始めとする特級騎士団の各団長クラスの騎士さん達。 彼らもまた、儀礼用の隊服に身を包み。剣を床に刺すよう構えた。 参列者の中には先程のヴィンの姿があり… 宰相に元帥といった、議会では見知った顔ぶれが勢揃いし。大掛かりと謳いながら、参列者は最低限の要人のみに止められているそうで… 儀式の進行は、大司教トリント様が努める。 そして神子の儀式による導き手には、フェレスティナの女王アリシア様が直々に名乗りを上げていた。 「セツ。」 「うん…」 荘厳なる空気に、足がすくみそうになるのを。 穏やかなルーの声音が払拭してくれて。アシュも目配せで、励ましてくれる。 一歩一歩踏み出すごとに、オレ達の足音だけが道内に響き渡り… 「セツ殿、此度は我々フェレスティナの民の為、よくぞこの場にお越し下さったことを…私、アリシア・G・ティエ・フェレスティナが、国を代表して御礼申し上げます。」 祭壇に立つアリシア様がオレへと優雅に一礼し、手を差し伸べる。 そこでルーとアシュはオレから手を離して。 代わりにオレはアリシア様の手を取り、祭壇へと導かれた。 「アリシア様…」 「ふふ…緊張なさらずとも、大丈夫ですわ。」 表情を固くするオレを気遣い、いつも通りの口調で告げるアリシア様は優しく微笑んで。繋いだ手を両手でそっと包み込む。 「怖れることはありません、貴方には皆がついておりますから…」 言ってアリシア様は、右手の指輪をこっそりと示して。 「ね?…セツ殿。」 うふふ…と悪戯に笑うから。 真っ赤になりながら、思わずルーへと視線を送ってしまった。 「セツ…」 目が通うルーは、微笑と共に強く頷いて。 「セツ殿、ご覚悟は宜しいか?」 トリント様の一声に、オレは一度目を閉じ大きく深呼吸をすると… 「…はい。」 応えて祭壇へと向き直った。

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