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④
「セツ…すっごくキレイ…」
儀式を執り行う聖堂に向かう途中で、みんなとも合流し。開口一番、いつになく静かなロロは…感嘆しながら頬を朱に染める。
「へぇ…意外と様になってんじゃん。」
「えへへ……ジーナもロロも、今日は随分と大人っぽくてカッコいいな!」
珍しく誉めてくれたジーナも、耳が真っ赤になっていて。年少組もルーとお揃いの正装で着飾り、腰に帯剣してるからか…騎士然とした佇まいでいて男らしくみえる。
「セツ、ルーには申し訳ないけど…此方の手は僕にエスコートさせてもらっても?」
言ってオレの左側に立つのはアシュで。
ルーと挟まれる形となる。
「俺とロロは後ろに着くから。裾長いし、気を付けろよ。」
「うん、解った。」
儀式用の衣装はドレスみたいに長いから。
慣れないオレが本番で転倒しないよう、ルーとアシュでリードしてくれるらしい。
一応演出する意味合いも、兼ねてるらしいけどね。
こうしてみると周りにイケメン守護騎士を侍らせる、ハーレムな神子…って感じがして恥ずかしいのだが。
大事な儀式の最中にズッコケたくもないので、大人しく受け入れることにした。
「私は先に、聖堂へ向かいますので。」
先行して一度振り返るヴィンは、胸元に手を当てて。
「貴方の努力は、私が誰より理解していますから。」
「ヴィン…」
そう告げると小さく微笑んで。颯爽と聖堂へと向かった。
「我々も、参ろうか。」
「うんっ…」
ルーとアシュに導かれ、ゆっくりと廊下を行く。
「神子様のご入堂にございます──────」
重々しく扉が開かれ、先に祭壇が目に留まり。
ここから真っ直ぐその場所まで、紅色の絨毯が敷かれ…
挟むようずらりと並ぶのは、オリバーさんを始めとする特級騎士団の各団長クラスの騎士さん達。
彼らもまた、儀礼用の隊服に身を包み。剣を床に刺すよう構えた。
参列者の中には先程のヴィンの姿があり…
宰相に元帥といった、議会では見知った顔ぶれが勢揃いし。大掛かりと謳いながら、参列者は最低限の要人のみに止められているそうで…
儀式の進行は、大司教トリント様が努める。
そして神子の儀式による導き手には、フェレスティナの女王アリシア様が直々に名乗りを上げていた。
「セツ。」
「うん…」
荘厳なる空気に、足がすくみそうになるのを。
穏やかなルーの声音が払拭してくれて。アシュも目配せで、励ましてくれる。
一歩一歩踏み出すごとに、オレ達の足音だけが道内に響き渡り…
「セツ殿、此度は我々フェレスティナの民の為、よくぞこの場にお越し下さったことを…私、アリシア・G・ティエ・フェレスティナが、国を代表して御礼申し上げます。」
祭壇に立つアリシア様がオレへと優雅に一礼し、手を差し伸べる。
そこでルーとアシュはオレから手を離して。
代わりにオレはアリシア様の手を取り、祭壇へと導かれた。
「アリシア様…」
「ふふ…緊張なさらずとも、大丈夫ですわ。」
表情を固くするオレを気遣い、いつも通りの口調で告げるアリシア様は優しく微笑んで。繋いだ手を両手でそっと包み込む。
「怖れることはありません、貴方には皆がついておりますから…」
言ってアリシア様は、右手の指輪をこっそりと示して。
「ね?…セツ殿。」
うふふ…と悪戯に笑うから。
真っ赤になりながら、思わずルーへと視線を送ってしまった。
「セツ…」
目が通うルーは、微笑と共に強く頷いて。
「セツ殿、ご覚悟は宜しいか?」
トリント様の一声に、オレは一度目を閉じ大きく深呼吸をすると…
「…はい。」
応えて祭壇へと向き直った。
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