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⑤
「では…これより、神子セツによる結界再構の儀を執り行う。」
トリント様が高らかに宣言すると、オリバーさん達特級騎士達が一斉に跪き。
錫杖のような物を手にしたアリシア様とオレは、女神像が見下ろす祭壇前で向かい合う。
「女神フェレスのもと、主を敬愛し祷りを捧げよ。」
アリシア様が杖を鳴らし、全員が瞑目する。
しんと静まる堂内には香が漂い、鈴のような音が規則的に流れる中…トリント様が淡々と聖典を詠った。
それらが聞こえなくなると、またアリシア様の一声で以て皆は目を開く。
「神子セツよ、跪きなさい。」
女王の顔付きで告げるアリシア様に従い、オレは向かい合ったままフェレス像の前で両膝を突き頭 を垂れる。
するとアリシア様はオレの額辺りに手を翳 して。
徐に、呪文のようなものを囁き始めた。
その手から、緩やかな魔力の流れを感じる。
「世界を救いし異界の神子に、ささやかなる祝福を…」
因みに、これはおまじないというか…儀式が無事成功するようにという、一種の願掛けのようなものなのだそう。
そうして魔力が途切れたところで見上げると、アリシア様も膝を突き、
「神の寵愛を賜いし神子よ。我がフェレスティナに、その恩恵をどうかお与え下さい。」
こくりと頷くアリシア様にオレも無言で応えると。彼女は静かに祭壇から離れ…壇上にはオレだけが残される。
(……よし…)
皆の期待と視線を一身に背負い、胸の鼓動が高まるが…。
心静めようと、オレは右手の指輪へと視線を落として。
縋る思いでそっと口付けると…祷りを捧げるため手を組み、ゆっくりと目を閉じた。
(大丈夫…)
神子が力を発動させる術 に、たぶん正解なんて存在しない。
だからオレは、歴代の神子がきっとそうしてきたように。思い思いの方法で以て、奇跡を呼び起こす。
(オレは、願うだけ…)
大切な場所、大切な仲間…
それから愛する人の笑顔を。
ただ守りたくて。それだけを強く願う。
この国に施された先代神子の結界は。
何故か不安定だったために、ルーがあんなことになってしまった。
だから二度と、大切な人が奪われないように。
(お願い…)
オレが真の神子だというなら、
どうか神様…守るための力を貸して下さい───…
『おお……』
参列者が皆、言葉にならない感嘆を漏らす。
オレが祷りを捧げれば。
女神様はきっと応えて、奇跡の片鱗を分け与えてくれるから。
目を閉じていても、解る。
身体は温かな光に包まれ…瞼越しでも透けて見えるほどに目映い力が溢れ出し、広がる。
そうしてオレを中心に、光の柱は一瞬で膨れ上がり…フェレスティナに再度、女神の加護を授けるのだ。
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