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「なんだか、感慨深いですね…」 「そうだな…」 ぽつりとヴィンが呟き、ルーも独り言のように返して頷く。 「僕らのお姫様が、こんなに頼もしくなってしまったからねぇ。」 オレを見やり苦笑するのはアシュで。 「ホントな~。最初の頃は何しても危なっかしくて、護ってやらなきゃってさ~…今じゃ、俺達が守られてんだもんなぁ。」 ジーナも思い出に浸りながら、しみじみと語る。 「しかもセツってば、どんどん綺麗になっちゃうからさ~。神子は異例の男児にも関わらず、見目麗しく可憐だなんて…騎士団でもね、スッゴク噂になってるらしいよ!」 今日のセツはとびきり可愛かったしね!と、ロロは興奮したよう告げるけども…。 「ええ~…それってどうなの…」 正面切って綺麗だの可愛いだの言われるのって、メチャクチャ恥ずかしいんだけど。 てか、ちょっと前までなら男だし、抵抗すらあったはずなんだが… 「儀式でのセツは、本当に美しかったな…」 それは夢にまでみた神子以上に…むしろ女神そのものだったとも。ルーファスに告げられ、うっとりと見つめられるから。 「ははっ…セツの顔、真っ赤になってら~。」 「やっ、違っ…これはっ、」 ハートをすとんと撃ち抜かれ、耳まで熱を帯びてしまい。更にはジーナにからかわれるもんだから、隠れるようにルーの胸に顔を埋める、と… 「ひゃっ…」 いきなり身体がふわりと浮き上がり。 びっくりして見上げたら。 「ちょっ…ルー…っ…」 何故かルーはオレを、お姫様抱っこ…していて。 えっ、ナニコレ…どういう状況…? 「ん?セツも疲れて、歩けなさそうだからな。」 このまま運ぶとか言い出した、オレの天然タラシ騎士様は。にっこりと悪びれもなく微笑み掛けてきた。 「…いやいや待って待って、みんな見てるからっ~!!」 なるべく目立たないよう声を抑え止めても。 ルーは遠慮するなとはぐらかし、全く聞く耳など持たない。 しかも… (セツをこれ以上、人目に晒したくないんだ…) 今のお前は魅力的過ぎるから────とか、 こっそり耳打ちされるんだけど…。 アリシア様とか、立場も忘れて興奮気味にこっちをガン見してくるし。オリバーさんや他の騎士さん達だって、目を丸くして注目しちゃってるから… 逆効果じゃん…コレ。 「おやおや、ルーにセツを独り占めされてしまったねぇ。」 「あのように大胆な行動を起こす男では、なかったのですが…」 アシュは必死で笑いを堪え、ヴィンは呆れたよう嘆息するのが聞こえたけど。ルーは周りの反応などお構い無し、スタスタ歩き始めるから。 (もうもうもう~…) オレは諦め、羞恥に赤くなる顔をルーの首元にしがみついて隠すけど。 それすら逆効果なのだとは、気付けるだけの冷静さはなくて。 「ルーのばかっ…」 「ん?」 知らない!…と投げやりにぼやいて。 オレはせめてもの仕返しのつもりで、ルーの首元へぎゅうっと抱き付いてやった。

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