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③
…と、こんな感じで。
魔物と遭遇する度、足止めを食らいながらも。
みんなのおかげで怪我も無く、着々と森の奥へと進んでたのだが。
オリバーさんが言った通り、徐々に魔物の数も減って行き…しかし単体の強さは比例して、強靭さを増していく。
結界に耐性があるということは、それだけ強いということだから。多少戦闘時間は増すものの、だからといってルー達が遅れを取ることは無かった。
「もうすぐだよ、セツ頑張って!」
「うんっ…」
朝イチから全く変わらぬテンションで背中を押してくれるロロに励まされ、重たくなった足をなんとか持ち上げ進む。
すると鬱蒼と茂る木々の隙間から、木漏れ日が射し込む空間が目の前に広がり…
「ここが、聖域…」
一歩そこに踏み込んだ瞬間、オレはそれを確信する。なんとなく、空気が変わったというか…神子の力をより強く感じたから。
その拓けた中心には、身長より幾分か高い石碑が、ぽつんと建っていた。
「ああ、確かに…」
壊れてるなと。
引き寄せられるよう石碑に近付いて、触れる。
そこにはフェレスティナの国章と、石碑の成り立ちなどが此方の言語で刻まれていて…。
「分かるのか?」
「え?うん、ここにヒビが入ってるからね。」
ルーが興味深げに尋ねるので、石碑の角を指し示すけれど。何故かみんな首を傾げるばかりで、オレもきょとんとなる。
「僕達には、見えないのかもしれないね。」
もしかしたら神子だけの能力じゃないかと…アシュに言われ、もう一度ヒビが入った箇所を振り返る。
そのヒビの隙間からは、気泡のような細かい灰色の光が少しずつ漏れていて。
確かに、物理的なヒビではないのだと気付かされた。
「フェレスティナ程じゃないけど、ここもかなり限界に近いのかもな…」
城下のものはジークが抉じ開けて壊しちゃったから、殆ど機能してなかったし。
本格的に神子の力に目覚めてからは、そういうものも段々と分かるようになったんだよね。
儀式を終えてからも、更に感覚が研ぎ澄まされたような気がするし。
「修復を試みるにしても、一度身体を休めてからにしたらどうだ?」
疲れただろうと爽やかな微笑で告げ、汗の滲む額に貼り付いた髪を鋤いてくれるルー。
こういうこと、ルーは割りと自然にしてくるけど。正直オレはまだ慣れておらず、毎回ドキッとさせられるから…困る。
決して嫌ではないのだが…両想いになってからは、全然隠そうとしてないから。今まで我慢してた分の、反動なのかもしれないけど…
顔がなまじ良すぎるからさ、すぐドキドキしちゃうんだよなぁ…。
「セツ、喉渇いてなぁい~?」
「ありがと、ロロ。」
どーぞとロロから水を受け取り、適当な場所に腰を下ろす。勿論ルーも自然と隣に座るから。
触れる距離感を意識し、またドキドキさせられてしまった。
アシュとヴィンは、騎士団に指示を出すオリバーさんと何やら話し始め。ジーナとロロは見回りと称し、森の中を疾走していて…。
オレは膝を抱え、それらをぼんやりと眺める。
なんとなく、チラと見上げたら…ルーと目が合っちゃうので。オレは赤くなる顔を隠すよう、膝にそれを埋めた。
「体調はどうだ?結界の修復は、毎回消耗が激しいのだろう?」
「ん~少し疲れたけど。避けては通れないからね…」
何度も森歩きするのは、それこそ避けたいとこだし…ここまで来たなら後には引けないよね。
ルー達や騎士団にも、たくさん迷惑掛けてるからさ。
でも、ルーは優しいから…
「我々は騎士なのだから、この程度で迷惑だなどとは誰も思いはしない。」
特級騎士団とは、神子に仕えてこそ存在意義があるのだから。
神子が召されるのは、先代は例外として短かったらしいけれど…大体200年に1度くらいのものなので。
ルー曰く、憧れの神子に尽くせる事が何より本望だと熱く語る。
「憧れって…まさかの男が来ちゃったからねぇ…。」
照れ隠しに苦笑えば、ルーはオレを真顔で見据え。
「セツだからこそ、私は命懸けで護りたいと思うんだ。」
性別など関係無い、お前は唯一無二の存在なのだから…だなんて。
迷いも無くきっぱり断言するルーファスに。
オレはつい目的を、忘れてしまいそうになるけど…
「セツ、そろそろ良いかい?」
「あっ…うん、いけるよ!」
アシュに呼ばれ、慌てて立ち上がる。
一瞬ルーを見やれば、やっぱり視線がぶつかり…
「行ってくる…」
「ん…」
ルーはただ優しく微笑んで。
オレの頭をふわりと撫でてくれた。
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