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「よしっ、やるぞ~!」 「セツ~頑張って~!」 ロロの声援を受け、皆がオレと石碑を囲んで見守る中。いよいよ2つ目の結界へと挑む。 先程まで魔物と戦いながら進んで来た森とは違い、聖域内はとても静かで。木々の葉が大きく風に揺らいでいるにも関わらず、思うほど周囲の音は聞こえてこなかった。 それでも、空気が…気配が澄んでいるかといえば、 そうとも言い切れず。 その原因は… (瘴気が、漏れてるんだ…) 石碑のヒビに触れると、そこから漏れる灰色の粒子に違和感を覚える。 これは多分瘴気が混ざっているから…魔力の粒子が灰色に濁り、外に漏れだしてしまったんだと思う。 (瘴気って、なんなんだろ…) よく漫画やゲームで聞いたことあるけれど。 イメージだと、悪いものしか浮かばなくて…こうして実際に触れてみると、やはり妙な感覚に襲われる。 ジークリッドの仲間が作り出したっていう、異空間とも酷似しているから…嫌な感じしかしないんだよね。 人間の体に直接的な害は、ほぼないらしいので。 神子だからこそ、敏感になってるのかもしれない。 (ふぅ……) 深呼吸し、祷りを捧げるよう胸の前で手を組む。 一度成功させているからか、気持ち的にも随分と余裕を感じられるし。右手には、ルーのくれた指輪もあるから…大丈夫。 この森の結界を修復すれば、森で採取するティコ達の安全も、今より確保出来るだろうから。 オレは子ども達の笑顔を胸に、精一杯の想いを込めて願った。 「やはり、綺麗だな…」 無意識な囁きはルーの声。 オレの身体が光に包まれると、皆が感嘆の声を漏らし。光は更に膨れ上がり、空へと立ち昇っていく。 それはまるで、女神にこの想いを届けるかのように。一際強く発光し、役目を果たすと細く収束して途切れていった。 「はぁ…」 一息吐いた途端、ガクンと膝から崩れ落ちそうになり。それを予想していたかのよう、ルーが素早く駆け寄り支えてくれる。 「セツ殿…体調が万全ではない中、大変お疲れ様でした。再びこの場に同行させて頂けたことに、深く感謝致します。」 オレを労りながら、眩しい笑顔を向けるオリバーさんに。騎士さん達も感動したと賛同し、頷く。 「こちらこそ、いつも守って頂いてますから…」 「いえ、それが我々の使命ですので。」 オリバーさんもルーと同じよう告げる。 自信は未だに持てないけど。こうして言葉で直接伝えられるのは、やっぱり嬉しい。 「けど大丈夫かい、セツ?この様子だと、帰りは歩くのも難しそうだけど…」 アシュがオレを覗き込み、心配そうに尋ねる。 前回もそうだけど、神子の力を使うと、かなり疲れるんだよね…。 今だって立ってるのさえ儘ならないから、ルーに支えてもらってるし。 「休憩してくって言っても、なぁ…」 微妙なジーナの反応は良く解る。 この調子じゃ、少し休んだくらいじゃ動けなさそうだし。何より当のオレ自身が、全く歩ける気がしないんだもんね…。

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