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「私は宮殿へ報告に向かいますから。」 「後の事は任せて、セツ達はゆっくりしておいで。」 ルーのおかげで、帰りは行きよりも格段に早く城下に到着したオレ達。 とはいえ、既に夕刻なんだが。 ヴィンとアシュが気を利かせてくれた為。 オリバーさん達騎士団とも別れた後、馬を借りてオレとルー、それからロロとジーナの4人で神殿の施設へと立ち寄ることになった。 身体は少し怠かったものの、帰りはルーに運んでもらったし…街道からは馬車に乗ってたから。 まあ、楽ではあった。何より… 「セツ~!!」 「ティコ…!元気にしてた?」 顔を認めた途端、全速力で駆け寄ってきたティコに。むぎゅ~っと抱き付いてこられ…癒されちゃったから。 無理してでも来た甲斐があったってもんだよね。 「セツこそ…大変だったって、神殿の人に聞いたよ?」 ぼくは大丈夫だよと、オレの頬に両手で触れて答えるティコは。心配そうな顔で、じっと見上げてきて。 思わず、無いはずの母性本能を擽られキュンとなる。 「セツさま…」 「あ、キミ達は…」 出迎えてくれた子どもの影の中、遠慮がちにこちらを見つめてくる3人の少年達に目が留まり… グリモアに利用された子達だと、気付いた。 「キミ達も、無事だったんだね…」 彼らも元気そうだし、安堵して笑うオレに対し。 少年らは涙を目いっぱい溜めて… 「ごめんなさいっ…」 堰を切ったよう、ボロボロと泣き出し謝罪し始める。その悲痛な姿に、ズキリと胸が締め付けられた。 「ううん、オレの方こそごめんね…」 こんな小さな子ども達を巻き込んでしまって… 釣られて泣きそうになってたら、少年達は不安そうに首を傾げて。 「怒ってない、の…?」 神子様を騙したのに…3人の少年は、じっとオレを見上げるから。 「怒らないよ。悪いのは、キミらを騙した大人の方だからね。」 不安にさせないよう、優しく微笑み掛けたら。 少年達もティコのように抱き付いてきたので…みんな纏めて、むぎゅっと抱き締めてあげた。 あれ以来…この子達とは会えず仕舞いだったから、 傷付いていないか心配だったんだけど。 やっぱり来て正解だったみたいだ…。 「そうだ、今日はティコに知らせたいことがあったんだけどさ…」 少年達が落ち着いたところで、オレは改めてティコへと向き直り。きょとんとされる中、ニコニコしながら神淵の森でのことを伝えると… 「そっか…ぼく、あの時セツに迷惑かけちゃったから…」 ごめんなさいと、ティコは頭を下げる。 「違うよ、元々あの日は様子を見るだけの予定だったんだし。」 寧ろティコは巻き込まれたんだから、気にしなくていいのに…。 「でも、ぼくのせいでセツも危なかったでしょ…」 言ってしゅんと俯いてしまうティコ。 確かに、魔物に狙われたティコを庇ってオレも危うくやられそうになったけど…。それをきっかけにして、神子の力に目覚めることが出来たんだから。 「ティコのおかげでオレは、神子の力を使えるようになったんだからね。」 ありがとうと告げ、頭を撫でてあげると…。 ティコは恥ずかしそうにしながらも、笑って返してくれた。

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