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ep. 24 神子様は騎士にご執心①

「慣れってスゴイよなぁ…」 この世界の生活も、2ヶ月は過ぎただろうか。 とは云えど…そんなことを気にする暇もなく、目まぐるしく時は走り抜けて行き…。 もうずっと前からここで暮らしてたんじゃないかなって思えるくらい、濃密な日々を送ってきた。 最初こそ、神子屋敷や宮殿の敷居の高さに気後れしたこともあったが…。今じゃ屋敷に帰れば、家に戻ってきたな~ってくらい馴染んでしまったし。 何度も訪れていれば、宮殿すらも見慣れたものとなった気がする。 それに… 「セツ殿~、その後の進展は如何ですか~?」 「あ、アリシア様っ…もう少し小声で喋って下さいよ~…」 こうして天下の女王陛下様とも、今では女友達みたいな関係になってしまったし。 オレがアリシア様の口を遮っても、誰も無礼者!…なんて言わなくなっちゃったもんだから。 ホント、不思議だよなぁ。 「今日は魔王との決戦について、話すんですよね?」 「あらあら、残念ですわ~…(わたくし)セツ殿から直接貴重なお話が聞けると思い、夜も眠れませんでしたのよ…妄想がもうっ止まらなくって!」 いやホント女王様って、中身まんまアリサちゃんだよね…。しれっと聞き捨てならない本音ぶっ込んでくるし。 その所為で、女王様だってことを忘れそうになるんだけど。 ここは気を抜かないようにしないと、核心突いてこられて変なこと聞かれたりして、すぐ動揺しちゃうから…。 「陛下、セツをからかうのは後にして…まずは議会に集中して下さい。」 主に対しても常に己を崩さず、ピシャリと言い放つのは勿論ヴィンセントであり。 こういうところ、ちょっと尊敬するよね、アリシア様じゃなかったら通用しないだろうけど。 てかコイツ、さらりと酷いこと言わなかったか…? 「ごほんっ…それでは本題に参りましょう。」 宰相さんの一言で、漸く議会が始まる。 …と、出だしはこんな緩い感じではあったが。 これから話し合うのは勿論、ジークとの戦いについてであり…そこからはみんな気持ちを切り替え、真剣な面持ちになる。 「出発は3日後明朝、要員は神子セツ殿を始め、守護騎士4名…特例として特級騎士団・第一部隊所属のオリバー殿を加え、神子付き世話役の(わたくし)も同行させて頂きます。そして騎士団の各団長、副団長を中心とした選抜部隊…此方の総指揮は、第一本隊団長のオリバー殿が隊から離れる為、第二支隊団長殿に一任致したいと思います。」 ヴィンは今回の作戦で、参謀役を勤めるということなので…彼が議会進行をしていく。 特級騎士の副団長から頭脳を買われ、一時期は治安部隊の指揮官まで勤めていただけに。その実力は折り紙付きだそうで…何気に次期宰相とも噂されてたりするらしい。 実際に、宰相さんからも勧誘されてるんだと… ルーがこっそり教えてくれたのだけど。 いつもオレ達を纏めてくれたり、影で働き掛けてくれたり…。あの女王様相手に全く物怖じしない性格もそうだけど。 ヴィンなら、納得出来る話だよね。 「魔族側が指定した日時までは10日余りですが…神子殿の体調も考慮し、早めの出立をと考えております。」 神淵の森でもそうだったけど、魔王城に行くなら必ず森の中を歩いて行かなければならないので。 オレが足を引っ張るのは明らかだし、用心のためにも早めに出発するんだろう。

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